暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
そして誰かがいなくなる
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
戦線を、飛び出してきたレンと入れ替わりで後退したミナは、傷ついた身体に鞭打ちながら、山麓エリアの中を疾駆する。常ならない力が込められた脚は、赤茶けた岩盤に《足跡》を残していく。

普段ならばミナはすぐにそのイレギュラーさにはすぐさま気付いたのだろうが、いかんせん今の彼女にはそんな余裕がない。

一歩どころか半歩も出ていないだろうが、今の自分が少しだけ憧憬(レン)に近づいていたことなど、気付けなかった。

破壊不可能であるとシステム上で規定された、地形データに干渉することなど、一介のプレイヤーには不可能なことをしているのに。

そんな少女が向かったのは、山麓の中腹―――といってもほとんど原型が失われているのだが―――灌木がちらほらと生えているエリアだ。

細い体躯を削るようなスライディングでその中の一つに突っ込んだミナを出迎えたのは、その影に隠れるように身を潜めていた二つの人影。

山猫のような剣呑な気配を隠そうともしない狙撃手の少女、シノンに、その脇で地面の上に工具を広げているリラだ。

「リラちゃん!まだ!?」

噛みつくように叫ぶミナに感化されたように、ピリピリとリラは叫び返す。

「やってる!!今、少しでも装甲抜く可能性上げるためになんとかタンデムに――――」

「レンがまた出てきたんだよ!?もう時間がないって!」

「ッ!分かってる!少し黙ってなさい!!……シノン、掴めた!?」

弾頭を広げた工具類を駆使して《改造》していくリラはそこで、隣で《吸血鬼(ヴァンピール)》の巨大な砲身に取りつくハンディカメラサイズの光学照準器に細かい調整を加えていた狙撃手の少女に言う。

シノンは、淡いペールブルーの髪を振りながら首肯する。

「零点規正はだいたい終わったわ。細かいクセも頭に入ってきたし、次はいけると思う」

淡々と、あくまで必要な事項だけを事務的に報告するシノンは、すでに狙撃手として――――戦場の眼としての役割に入っていた。

どんな状況であれ、取り乱さない鋼の精神力。

薄く研いだ氷の刃のような冷たい鋭さが、そこにはあった。

それを、その姿勢を、その覚悟を目の当たりにし、《戦争屋》の異名を冠される二人のコンビは、ただ眼の色だけを変える。

袖をまくる《爆弾魔》は、静かに自分の役割を再確認した。

「……OK。なら、あとはコイツだけね」

「急いで、リラちゃん」

いくぶん緊張の入った相棒の言葉に、少女はただ頷く。










白。

白く、白い、純白で真っ白で、白無垢な空間。

どこまでいっても白いその空間は、どこまでいっても無機質で、どこまでいっても冷たく、どこまでいっても拒否的だった。

時間さえも白濁したように停滞す
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ