月下に咲く薔薇 25.
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空でアリエティスがさっさと姿を消した事に対する憤りが溢れ出ている。
尤も、今は互いに状況を理解している者同士。流石に、繰り返し斬り合うところまでは踏み込まなかった。
『準備はOKか? クロウ』と、万丈が試行の開始タイミングを探る。
即答はしなかった。
目前の発生点に対する不快感を、自分の中で更に膨張させてゆく。
鳥籠のような形をしているバラの檻。
常に右半分の視界を遮る植物の束。
更には、仲間達を驚かせてしまった今の自分の有様。
異常事態全体に目を向け気持ちを逸らしている場合ではない。アイムも嫌いだが、このトラップには個人的な怒りの念が湧く。
元の姿に戻りたい。そんな小さな望みくらい叶えさせろ、と感情を迸らせる。
「ああ。始めてくれ」
クロウは更に、バラの枝が大きく弧を描き扉に吸い込まれてゆく様を想像した。
扉は、折角だから円形にしておく。青白い円盤の中央に割れ目が走ると、観音開きの扉は星々が瞬く宇宙の広がりを垣間見せてくれた。
好き勝手に伸び放題だった長い枝が、捻れ、くねって、否応もなく1つの方向へと曲げられる。
扉の向こうに帰るのではない。無理矢理吸い出され、この世界から追い出されてゆく光景だ。
想像で終わらせたくはない。元の姿でバトルキャンプ上空に帰る為にも。
『それでは、僕も始めます』
軽装備な白いガンダムが、ビームサーベルを抜いた。
全ガンダムの中で最も細い光束が、∀の手元を明るく照らす。
端末を握るクロウの左手に力が入った。
友軍機と怪植物の映像を全画面表示に切り替える。携帯端末宛に映像を送ってくれるのは、仲間達の機体から距離を置いた万丈だ。
『さあ、アリエティスを離してください!!』
叫びながら、ロランの∀ガンダムが植物塊の最も太い部分を横に薙ぐ。
クロウとアリエティスを気遣ったのか、敢えて突こうとはしない。
直後に、半球状のDフォルトが多色光を放った。
やはり遮られてしまったか。
と思いきや、ビームサーベルの先1/3程が光の障壁の向こう側まで突き抜けてゆく。
しかも、剣先を走らせる勢いが全く死んでいないから驚きだ。
クロウとロックオン、万丈にアテナの口が大きく開いた。
光剣の先端が植物塊に沈む。
∀ガンダムがそのまま柄を右から左に動かすと、編み込まれた塊には1本の筋が描かれた。
葉や枝どころか、絡み合った茎さえもが実にあっさりと両断される。
∀のビームサーベルだからか。いや、∀の攻撃だからだ。
− 26.に続く −
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