月下に咲く薔薇 25.
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つ深呼吸をした。『何でもいいという事なので、ビーム・サーベルを使います』
『大丈夫だ、ロラン。きっと上手くゆく!』
それは、妙に力の入った万丈の励ましだった。
本当に上手くゆくのか、とクロウは疑問に思ったが声には出さずそっと飲み込む。
次元獣のものよりも遙かに厄介な障壁は、単機での攻撃どころか集中砲火さえいとも容易く無効化してしまう。昨夜、バトルキャンプでZEXISとZEUTHが嫌という程思い知った苦みを伴う事実ではないか。
しかし、映像の万丈は眼光鋭く口端さえ上げていた。
『俺の勘さ』と爽やかに笑う男までも、∀ガンダムによる初手の成功を信じ始めている。
太陽機という響きの何が、いや、月の恵みという言葉の何が万丈を動かしたのだろう。
『そして、クロウ・ブルースト』消耗激しいアイムが、クロウを呼ぶ。
「どうした?」
『今一度選びなさい。あなたの中で、受け入れるもの、と拒むものを。そして、強く念じるのです。怪植物の力を押し戻したい、と』
「念じるって。俺は、強く思うだけでいいのか?」
『ええ。∀ガンダムの攻撃が、始まる前に。そして、続けなさい。あなたの内と外で、何が起きようと』
「わかった。やってやるよ。今度はきっちりとな」
若干の負い目があるので、今回くらいは一応アイムの指示に従っておこうと考える。
見回せば、葉と棘のついたバラの茎が視界のほぼ全てを占めている濃緑中心の世界だ。赤い光は、植物の重なった部分を避け隙間から僅かに差し込む程度。最早、異物取り出しどころの話ではない。
一切触れる事ができず植物特有の匂いもしないが、体内に仕込まれた異物の背を押しここまで派手に敵を解放してしまった原因はクロウ自身にもあると思っていた。
取り敢えず、アイムに対する警戒心を押し殺さなければ。
視界がどうのと言っている場合ではないので、右手の覆いを外し右の瞼を開く。
目前にあるのは、放射状に多方向へと広がる植物の発生点。眼球を突くのではないかと思わせてその実無害という、始まりの一点だ。
こんな光景と比較しなければ、アイムに対する嫌悪を薄める事ができないとは。積み上げてきた関係というものは、容易に人心を操作させてはくれない。
『気持ちはわかるぜ』と、隻眼の男にクロウの心中を見透かされる。『お前ならやれる! 頑張れよ』
「ああ。今度こそヘマはしねぇ」
クロウを励ましたスナイパーが、間を置かずに『アイム』と一音下げて呼びかけた。
『…何でしょう?』
『今のクロウはアリエティスの中だ。たとえお前が死んでも、クロウだけは守れよ』
『無論です。あなたの左目よりも、役に立ってご覧に入れましょう』と、アイムも減らず口で応酬する。
元々敵同士なだけに陰険なやりとりが耳に痛い。その上ロックオンからは、バトルキャンプ上
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