月下に咲く薔薇 25.
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
理由にしちゃ弱いだろ。植物は太陽の光が好きだから、とか言うなら否応もなく却下だ」
提案者は反論しなかった。息ができないのか、改めて考えを巡らせる為に集中しているのか。その理由は想像するより他にないが、間を置いた後、男はようやくぼそりと呟く。
『∀ガンダムに、攻撃させなさい。月光蝶が使えないのは、残念ですが。その効果が…、月の恵みがもたらす効果が、全てを語る筈です』
『アイム…。あなたは、一体何を知っているんですか?』
携帯端末に映るロランが、突然何かに打たれた様子で声を上ずらせた。
左目だけで見ていてもわかる。少年の変化は、知られたくない秘密を握られていた事に今気づいた者の狼狽だ。
クロウ達ZEXISは知っている。ロラン程、嘘や保身といった行為から縁遠い少年も珍しい、と。共に柔らかな物腰で人と接するが、血液の代わりに虚偽を巡らせて命を繋ぐアイムとは違い、彼にこそ紳士という表現が相応しい。
もし、そのロランが秘め事をするなら、間違いなくやむにやまれぬ事情によるものだ。
月光蝶。
そして、月の恵み。
およそガンダムという戦闘兵器には似つかわしくない呼称だが、揃って∀ガンダムと共にある重い何かを指すものである事は話の流れから明らかだ。少年の表情を伺うだけで、その切実な問題が透けて見える気がする。
できればZEXISにも隠しておきたい秘密だったのだろうに、よもや既にインペリウムの知るところとは。
かつて、ソレスタルビーイングのメカニックが話していた事を思い出す。
総合的なバランスを見ても、今の戦場で使用する武器が∀の全てではない。イアンは、冷静にそう分析していた。自己修復可能な装甲、GNドライヴとは全く別の原理で無限の機体運用を可能にする技術。ソレスタルビーイングさえ舌を巻く高みに到達した開発者達が、彼等にとっては旧式となる通常兵器の外付け運用で妥協するなど到底考えられない、のだそうだ。
∀ガンダムは、必ず何らかの武器を内蔵している。しかも、ソーラーアクエリオン並に掟破りな性能を持っているのではないか、とまで言い切った。
但し、専属パイロットのロランは、出撃の度に通常兵器のみで戦果を上げる事を繰り返している。まるで、ZEXISの知らない最強兵器など存在しないかのように。
使われないなら、何も無いものと解釈する。それがクロウのやり方だ。
もし。封印すべき理由がパイロットとZEUTHの両方にあるのなら、それは全てに勝る最優先事項だ。アイムがこの異世界で何を望もうと、使わせていい筈がない。
『急げ、ロラン』当然桂も、少年の狼狽から決して見落としてはいけないものを読み取る。『質問攻めにするのは後回しだ。時間がない。とにかく言われた通りに試してみようじゃないか』
『わかりました』気を取り直した褐色の少年が、1
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ