5部分:第五章
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第五章
「そういえばいつも言ってるわよね」
「だから肝に銘じておきます」
後輩もリラックスした顔で返すのだった。
「そのことは」
「御願いね。怪我だけはしないでね」
今度は真面目な顔になる華だった。そのことを念押しするかのようだった。
「それだけはね」
「わかりました」
「それじゃあ」
後輩達は彼女の言葉に頷いてそのうえで掃除に励んでいた。それを見た柔道部の後輩達がそれぞれ言うのだった。
「へえ、あの人奇麗だよな」
「それに優しい感じだよな」
「ああ、俺あの人知ってるぜ」
ここで後輩の一人が仲間達に話すのだった。
「あの人萩原先輩っていうんだ」
「萩原先輩っていうのかよ」
「女子空手部の主将だぜ」
このことを仲間達に話す。
「何か部活でも寮でも凄く優しい人らしいぜ」
「奇麗で優しいのか」
「本当かよ、それ」
「俺寮にいる彼女に聞いたからよ」
だから知っているというのである。
「本当だぜ。すっごいいい人なんだってよ」
「そんな人もいるんだな」
「顔がいいだけじゃなくてな」
後輩達は彼の言葉を聞いて素直に華を賞賛していた。彼等にとってみれば華はまさに素晴らしい先輩だった。そして彼等の言葉は裕二郎も聞いていた。
「そうなのか?」
今のも見ても半信半疑どころではなかった。七割は疑っていた。しかし三割は信じる気持ちになっていたのも確かだった。それで次の日クラスで皆にこのことを話すのだった。
「それ聞くと少しは本当に聞こえるけれどな」
「けれどマジか?」
彼等も七割は信じていないのだった。中には八割か九割は信じていないのではないかという表情の人間も入っていた。
「あの萩原が優しいってよ」
「いつも夜叉みたいに怒るのによ」
「後輩には優しいんじゃないのかな」
ここで裕二郎は言うのだった。
「ひょっとして」
「後輩にはねえ」
「そういうものかな」
こんな話をするのだった。しかし実際に今クラスにいる華を見てみると。クラスの女の子達の中で優しい笑みを浮かべているのだった。
そのうえで話をしている。その表情はとても明るく奇麗なものである。
それを見て裕二郎達は。また言うのだった。
「やっぱり本当は優しいのか?」
「どうなんだろうな」
そしてまた首を傾げるのだった。
「実際のところは」
「どっちとも言えないな」
そんな話をしながら華を見ている裕二郎だったがここで気付いたのだった。彼女の足元にハンカチが落ちていることに。
「あっ」
「あって?」
「どうしたんだよ」
「いや、ハンカチが」
それに気付いて皆にも言うのだった。
「落ちてるから。ちょっとね」
「ちょっとって」
「何処行くんだよ」
皆の言葉をよそに半ば無意識のうちに足を前に出
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