ターン40 鉄砲水と七色の宝玉
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ベルトだけ持って外に出た。
特に行きたい場所もなかったので風任せに森の方へ歩いていくと、やがて海沿いの崖に出る。この辺りは特に高くて急な場所で、ロープの1本も張ってないのは危ないんじゃないだろうかといつ来ても思うけど事故が起きたなんて話を聞いたことがないあたり大丈夫なんだろう。潮風に当たりながらそんな場所をふらついていると、何か異様な光景が見えた。
……いや、異様なんてもんじゃない。なんだあれは、変な奴がいるぞ。その人影はなぜか崖際の木の海に向かって突き出た枝にロープを固定し、そこに自分の足をくくりつけていた。もしロープが切れたら10メートルはあろうかというこの崖を真っ逆さまなのでこれだけでも十分訳が分からないのだが、それだけではなかった。なんとその人影はそんな天地逆転した姿勢のままで体がぶれないようにバランスを取りつつ、腕のデュエルディスクからカードを引いていたのだ。シュールすぎて笑いも湧いてこない光景だったが、さらに近づいてよく見るとその人影は僕の見知った顔だった。
「……オブライエン!?」
今までその逆さ吊りに神経を集中させていたのか、声をかけて初めて僕が来ていることに気が付いたらしい。何か装置を操作するとロープの巻き上げ機構が働き、シュルシュルと地上に帰ってきた。
「またお前か。今度は何の用だ」
「いやそれこっちが聞きたいね。何やってたの一体」
わかるまで絶対帰らない、という態度が顔に出ていたのだろうか。一度は無視しようとしたらしいオブライエンも、僕の顔を一目見るとため息をついてあっさり口を割った。
「俺が昔から行っている訓練の一環だ。自らの身を追い込むことで神経が研ぎ澄まされ、次のドローカードさえもある程度読み取れるようになる」
わかったらあっち行けとばかりの鋭い目線には、肩をすくめて気づかないふりをしておいた。なんで神経が研ぎ澄まされるとドローカードが見えてくるのかはこれっぽっちもわからないけど、人の趣味にケチをつける気はない。とりあえず何をしていたのかは分かったので、どうせここで会ったのだからと言いたかったことを言うことにした。
「なるほど。それで修業はいいんだけどさ、昨日はありがとうね」
昨日、つまりオブライエンに頼んで持って行ってもらった手土産だ。昨日十代と意気投合してレッド寮に遊びに来たヨハンから、ちゃんと渡してもらったことに関する裏は取ってある。いや、信用してなかったわけじゃないけどね。一応職人の端くれとして、感想ぐらいは聞いておきたかったのよ。
「気にするな。一度引き受けたことだ」
「いやいや。あ、気に入ったらオブライエンも買いに来てねー、お安くしとくよー」
「………」
営業トークにはスルーですか、そうですか。さすがに昨日の今日でオブライエンとまたデュ
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