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鎮守府と自身達の胃の為にも、絶対に許可しないと断固たる決意で望んでいた。
筈なのだが、結果は今提督の手に在る書類が物語っている。
一応、来客用として置かれているソファーに腰を下ろし、テーブルに書類を広げて今も目を通している秘書艦が居なければ、提督はクマークマー鳴く全自動世話焼き機の手によって駄目にされていた事だろう。そして鎮守府も、球磨が抜けた事によって徐々に歯車が狂って行き、緩やかな崩壊にむかっていた筈だ。
自身と鎮守府の無残な未来が見えたのか、提督は小さく身震いしてから掌で額を軽く叩いた。それから顔を上げて、書類に目を落としている秘書艦に感謝の言葉をかけた。
「あぁ……本当に助かったよ、ありがとう、早霜さん」
「……ふふふ。こんな私でもお役に立てたのね……嬉しいわ、司令官」
書類から目を上げ、提督の言葉に無垢な笑みを浮かべるのは、独特な制服を着込んだ艦娘、早霜であった。常の秘書艦初霜、または代理をよく頼まれる加賀や大淀ではない。
今日は、早霜が提督の秘書艦なのだ。
そんな事もある物なのだろう。
初霜、大淀、加賀、という提督の補佐役を長く勤めた事務仕事に馴れた艦娘達は、現在年末の倉庫群の在庫調査中だ。
小分けにして調べても居たのだが、やはりこの時期になるとどうしても大掛かりな仕事が転がってくるようで、それはこの鎮守府も逃れられない物であったらしい。
その為、比較的事務仕事に馴れて、しかも提督好みに静かな早霜が代理として秘書艦を担うことになったのだ。もっとも、その仕事も昼までだ。
現場で指揮を執る大淀は倉庫から動けないが、初霜と加賀は昼で一旦引く予定である。
早霜はその間の繋ぎだ。最終的には初霜もまた早霜の仕事をチェックするのだから、代役程度と考えて気軽に構えてもまったく問題ない仕事であったのだが、
「司令官……お茶を、どうぞ」
「あぁ、ありがとう」
早霜は確りと勤め上げていた。
書類仕事も確りとこなし、提督が疲れたと見たら一礼してお茶を汲み、場が静かに過ぎて二人の間が乾燥した時等は、邪魔にならない程度の世間話や噂話で執務室の乾いた空気を潤した。
それは長く提督の秘書艦を勤める初霜や、事務方になれた大淀、提督のお気に入りである加賀に比べれば少々力及ばぬ所作ではあったが、誰の目から見ても秘書艦に相応しい仕事振りであった。勿論、提督に異などない。在ろう筈もない。
提督の手に在って、軽く嚥下された茶などは提督好みの風味と熱さであるのだから、異など欠片もない。
「あぁー……美味しいなぁ……」
ほっと息を吐きながら心底と声を零す提督に、早霜はゆったりとした仕草で口元を掌で隠して小さく笑った。その笑みに
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