暁 〜小説投稿サイト〜
執務室の新人提督
65
[4/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
がめいる事もあるようで、それなりの頻度で散歩する姿も目撃されている。今回、その散歩先が偶々曙達が居る港であったと言うだけのことだ。
 実に不幸なことであるが。
 
「おうおーう! 秋雲さんよーう。ここを通りたきゃ払うもん払って貰おうかー」
「えーっと、はい、これ」
「……ナニコレ?」
「え、提督の絵だけど」
「キタコレ!」

 秋雲に対して、良からぬ悪い顔で絡んでいた漣は、しかし秋雲がスケッチブックから離して手渡してきた提督の絵一枚で確り餌付けされていた。
 
「この前一緒に提督と港で喋った時の記憶を頼りに、一枚二枚と書いたんだぜーい」
「自慢ですか、自慢ですか? 秋雲さんそれは自慢ですか?」

 そして瞳孔が開ききった目でまた絡んでいた。実に表情豊かな艦娘だ。
 少々可笑しいところもあるが、平々凡々な提督を頂におくだけあって、この鎮守府は平和である。特に艦娘同士の衝突もなく、穏やかに過ぎる日が多い。だが、何事にも例外がある。
 それがこの、漣と秋雲だ。
 両者共に、ネットに強い、いわゆる提督に近い艦娘なのだが、漣は活発的な所が提督と相性が悪く少しばかり距離が遠い。対して、秋雲は提督と特に親しいと言われる艦娘の一人だ。
 漣からすれば自身と近しい秋雲が、漣曰くのご主人様と親しくやっているという現状に納得がいかぬという訳である。
 
 その癖
 
「で、漣達は何してんの? ねぇ何してるの? ねぇねぇ?」
「妹の真似すんなし……あれ、妹じゃないんだっけ? あぁもー! 秋雲紛らわしいし!」
「えー……で、何してんの?」
「漣達はクリスマスでやるダンスの練習中よ! 秋雲と違って篭ってばっかじゃないんだからね!」

 会話は案外普通だ。と言うよりは、秋雲が主導権を握っているからだろう。これで秋雲まで漣に合わせれば一波乱起きることもあるだろうが、秋雲はのらりくらりと避けるので一応なんとかなっている現状である。
 その秋雲が、今度は曙に目を向けた。

「それって綾波姉妹全員で出んの?」
「そうよ」
「じゃあ、他の皆は?」
「綾波は演習で出撃、敷波は事務の手伝いで、朧と潮は敷波の手伝いよ」

 曙の言葉に秋雲はなるほどといった相でふんふんと頷いた後、どうした訳か比較的綺麗な箱に腰を下ろして鞄からスケッチブックを取り出し始めた。
 そしてペンを手に取ると、
 
「あ、秋雲の事は気にしないでいいよ。ほらほら、練習続けてー」

 と言った。
 言ったは良いが、しかし曙も漣も動かなかった。当たり前である。秋雲が準備したそれを見れば、彼女のやろうとしている事は明白だ。練習中の自身を描かれるなど、彼女達からすればなかなかに容認し難い物である。
 曙が口を開くより先に動いたのは漣であった。
 
「秋雲
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ