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少しばかり寂れた港の一角で、音楽が鳴り響いていた。
人影も絶えた港までの道に、もし誰かが居れば、物珍しさにつられてひょいと首を出して覗きにいったに違いない。
そしてその港の一角で、たった二人で踊る少女達を見て思わず拍手を送った筈だ。
ただ、その拍手は賞賛の物ではなかっただろう。
「漣、ワンテンポ遅い!」
「ムキー! 曙だってさっき間違ったくせにー!」
その拍手は、二人の少女のひたむきな努力に向けられた応援に近い物であった筈だ。
音楽を背にたった二人で踊る曙と漣は、額を流れる汗も拭わずただ踊っていた。
さて。
何ゆえに曙が人もそう来ぬ港で漣を共に踊るかと言うと、季節が関係する。
秋も去って冬となった訳だが、この冬にある大きなイベントが、とある人物の参加によって更に大きくなってしまったのだ。
その為、毎回この季節にはステージでダンスを披露する那珂は、例年以上にしようと参加メンバーの枠を広げた。クリスマス島攻略作戦時と同じ編成で、更に四水戦からも、それ以外からもメンバーを受け付けたのだ。
では曙はその別枠から拾われたのか、と言うとそれは間違いである。彼女は那珂に、クリスマス島攻略作戦の編成メンバーとして招かれた。実際には曙は参加していない作戦であるのに、だ。
そうであるのだが、これも縁であるのだろう。あけぼの丸と言う船は参加していたのだ。つまり、代役である。
常の曙であれば、
『何よそれ……つまり私じゃなくていいんじゃない。そんなの……別に参加しないし』
等と返そう物だが、冬の大きなイベント、特に今年からは提督も参加すると言う目の前のそれに惑わされたのか、どこか暗い影を落す自身の艦時代とはちがった、華やかなステージに思う事でもあったのか、気付けば頷いてしまっていたのである。
ついでに、その時曙の隣に居た朧の、隠された力を発揮する披露宴となる、という意味不明な鶴の一声によって綾波型姉妹全員参加となったわけである。
せめてその場に漣が居れば、汚いなさすが忍者きたない、と諭して朧を止める事も出来ただろうが、ネットに疎い曙では朧を止める事など不可能であったのだ。まぁ実際は漣が居たとしても、そんな意味不明な言葉で止める事は出来なかったと思われるが。
兎にも角にも参加である。となればどうするか、と言えばもう語るまでも無いだろう。
自分に合わない、等とどこかで思っていても、やるとなればやるのが曙だ。捻くれていようが素直じゃなかろうが、すべき事はするのである。
が、それでも体力には限界がある。通常の訓練を確りとこなした上で、プライベートの多くの時間をダンスの練習に割いているのだから、曙と漣の小さな体に負担が掛からない
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