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執務室の新人提督
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 軽巡洋艦娘達が住まう寮の庭には様々な花が植えられた花壇がある。
 秋にはその香りを振りまいていた金木犀も散り去り、代わりに類種の柊が咲き誇っていた。四季に応じた花が飾られたその場を管理するのは、長良型三番艦名取と、川内型二番艦神通、同じく川内型三番艦那珂と――
 
「おい、これなんか提督に合うんじゃないか?」
「いや、提督は男だから花とか喜ばないって言ってんだろ……?」

 球磨型五番艦木曾、そして天龍型一番艦天龍である。
 
 
 
 
 
 
 
 
 提督に似合うのではないか、と木曾が手にした花はまだ残っていたリンドウである。そろそろこれも散る頃なのだが、比較的温暖な今年の冬は未だ咲き残っていたのだ。
 天龍は木曾が摘もうとしているその花を見て、大きく肩を落として口を開いた。
 
「なぁ木曾、もう提督に花がどうだのなんてのは言わねぇよ。けどなぁ……それはやめとけよ?」

 天龍の気遣う声に、木曾は首をかしげて天龍を見た。天龍同様――とはいえ、互いに左右逆なのだが――眼帯に覆われていない真っ直ぐな隻眼が天龍に向けられる。
 その瞳に宿るのは、純粋な問いの色だ。そんな木曾に、天龍は頭を乱暴にかいてから溜息交じりで応える。
 
「リンドウの花言葉、悲しんでいるあなたを愛する、とかだぞ」
「……本当か?」
「嘘ついてどーすんだよ、んな事」

 目を剥いてリンドウから離れる木曾の言葉に、天龍はもう一度頭をかきながら肩を落として返した。なんとも言えない顔でリンドウを見下ろす木曾は、危なかったな……と呟いて顎の辺りを手の甲で拭っていたが、それもまた過ちである。
 であるので、天龍は相を変えず若干引き気味の木曾に続けた。
 
「いや、他にも正義とか誠実もあるんだぜ、そいつ」
「おぉ、いいじゃないか!」

 一転、明るい調子で手を打つ木曾に、天龍は疲れた顔で首の後ろ……うなじ辺りを叩きながらまだ続ける。
 
「つっても、有名なのは最初の花言葉だぜ? あんまお勧めできないぞ……? まぁ、お前が提督の悲しんでる姿がいいってんなら、俺はなんも言わないけどさ」
「冗談じゃないぞ、天龍。提督のそんな姿を見たら、俺は球磨姉さんに泣きつくぞ」
「なんでだよ」

 天龍の突込みにも返すことなく、木曾はまたそれなりに広い庭を歩き始めた。

 ――っても、提督が花言葉とかしってるとは思わねぇけどな。

 天龍はそう胸中で呟いた。男という生き物は花のなんたるかなどさっぱり理解していない生き物だ。精々食べられない植物、位にしか思っていない連中ばかりである。
 こればっかりは幾ら変な事を知っている提督でもそう違いはないだろうと天龍は考えたが、同時にその周囲に居る艦娘はどうだろうか、と考えると軽率な行動はとれ
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