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花は何も応えない。その為の口はなく、その為の心は無い。その筈だ。そうであるべきだ。それでも、天龍には確かに見えたのだ。花が頷いたと、天龍は確かに見たのだ。風に揺れたと彼女は思わなかった。そこに確かに、花の想いがあったとだけ感じたのだ。
それが錯覚だとしても、そう感じ取った以上天龍はその花を提督に贈らなければならなかった。それがこの花にとっても良い事だと信じて。
「木曾、はさみ貸してくれ」
「……おう」
木曾は短く答え、天龍にそれを差し出した。天龍はそれを受け取り、軽く頷いてまた花に向き直った。はさみを花に当て――天龍はもう一度零した。
ただし、今度は胸中でだ。花にさえ通じればよいと思い呟いた彼女の言葉は、
――私を見つめて。
サンビタリア。小さな向日葵の様な愛らしい姿の、いじらしい花言葉である。
それは多分、世話した神通もそれを黙ってみている木曾も、
「安心しろよ……これからいくところにはな、普通で可笑しくて、それでも飛びっきりにいい男がいるんだぜ」
今こうして花に語りかける天龍も、同じである。
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