64
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
なくなるのだ。
初霜辺りなら知っているかもしれない、大淀辺りは本命だ。
更に提督の第一旗艦山城となれば、花言葉から古代中国の呪詛まで知っていそうな艦娘だ。その辺りから提督に漏れた場合、提督としても流石に良い顔はしないだろう、と天龍は見たのである。
だというのに、木曾は何も考えていない様子で花壇の間を歩くだけだ。
天龍もまたそれに付き合いながら、そっと小さくため息をついた。
天龍の前を歩く、様々な花壇で咲き誇る花達をみながら歩いている木曾という艦娘は、この鎮守府を代表する歴戦にして、提督の切り札とも称される艦娘である。
重雷装巡洋艦、というたった三人しかいない希少な艦種に属する一人であり、これまでの働きは龍驤鳳翔に比べても決して劣らない。
元はただの軽巡であったが、姉達と同じ重雷装巡洋艦になってからという物、この鎮守府――いや、提督に仇なす特別海域での強敵達――提督曰く、ゲージ――を魚雷で粉砕してきた。
しかも姉達に比べて若干ではあるが消費量も控え目であるため、通常海域などでも艦種限定されない場合は編成に組み込まれて猛威を振るってきた艦娘である。
まず間違いなく、この鎮守府における武勲艦の一人だ。
ただし
「なぁ天龍、これはどうだ!?」
「あぁ、ガマズミかぁ……それ、無視したら私死にます、とかだぞ」
「山城みたいな花だな!」
ポンコツである。
庭に植えられた落葉低木のガマズミから離れる木曾は、日常においてとことんポンコツである。
なにやら花にも山城にも失礼な事を口走った木曾は、少々むきになった顔で周囲を見回し始めた。
ちなみに山城は、提督から無視された場合提督も一緒に巻き込んで死ぬので厳密にはこの花の花言葉とは違う。
さて、木曾である。
提督に贈る為の花を選んでいるのだろうが、その相自体が花を遠ざけている様な物だ。少なくとも花から愛される相ではない。
花を見るなら、もっと穏やかにあってはどうか、といった類の事を言おうとした天龍は、しかしそれをやめた。
「天龍、これどうだ!」
「あぁ……コスモスか」
木曾がコスモスを指差していたからだ。流石にここで菊を選ぶような真似はしないか、とどこか残念に思いながらも頷き天龍は木曾に応じた。
「まぁ、いいんじゃねぇか?」
「いや、コスモスの花言葉は?」
「んー……乙女の心とか、そんなんだぜ」
「良いじゃないか。よし、これにしよう」
天龍の口から出たコスモスの花言葉に木曾は気をよくし、しゃがみ込んで園芸用の刃部分の短いはさみを取り出してコスモスを選別し始めた。
そんな木曾の様子をなんとなく眺めながら、天龍は今木曾と共に歩き回った庭を見た。
そこにあるのは、低木や草花だ。その
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ