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で自由自在に使いこなす瑞鳳にかかれば、関西弁程度は軽いものであった。
が、那珂は特に瑞鳳の突っ込みに思う事もなかったようで、一人続ける。
「こんなダンスじゃ、提督が開催予定のドナドナ〜プラスコミュニケーション感謝ぱっく〜にはきっと勝てないよ!」
地面を悔しげに叩く那珂の相は、残念ながら真剣そのものであった。前の宴会――提督が檻に入って参加したあの宴会で、那珂は提督の語るドナドナに魅了された一人であった。誰もが知る悲しい童謡が、徐々に明かされていく謎によって壮大な物語として構成され、特に最後に語られた斬馬刀を構えるスラムキングとの対決など、姉の神通と共に手に汗握って聞き入っていたのだ。そして姉の川内は何も聞かなかったことにして黙々とチキンを食べていた。
那珂にはあれに勝てるだけの物が必要であった。
相手が提督であろうと、舞台となれば想いも憧れも無い。いや、人一倍想うからこそ、那珂はプラスコミュニケーション感謝ぱっくだかサマーバケーションだかプラスシチュエーションポータブルだかいう物に勝たなければならなかった。
愛しているからこそ、だ。
そして提督はそんな思いを向ける相手に、曲芸商法的何かで迎え撃とうとしている訳である。本当に残念な提督であった。
とりあえず。
那珂がうずくまり、瑞鳳は呆れて頭を抱え、野分は言葉も無くおろおろとする中で、由良は動かねばならなかった。
何せ彼女は第四水雷戦隊の、旗艦補佐――いわゆる副隊長という立場にいるからだ。
後日の話である。
由良がのんびりと食堂で食事を取っていると、突如慌しく扉が開かれた。
入ってきたのは長月であった。
彼女は食堂の中を忙しなく一望したのち、由良を確かめて足早に近づいていった。
焦燥を浮かべた長月の相に、さて何事か、と身を正す由良に長月は、
「ダンス部隊旗艦の那珂ちゃんが、青葉にぶつかって一時離脱だ」
「……え?」
そう言った。言ったは良いが、聞いた方としては意味不明である。
「……取材中の青葉と、運悪く衝突してな……双方手錬であったのが不幸となった……お互い避け様と無理な動きをしたものだから、こう……な」
「……」
青葉も那珂も、本当に運が悪かったらしい。
が、本当に運が悪い艦娘がここにいた。
「それで、那珂ちゃんから伝言だ……第四水雷戦隊副隊長として、意志を継いで欲しいと」
「……え?」
長良型軽巡洋艦四番艦、或いは改長良型、由良型軽巡洋艦一番艦由良は、第四水雷戦隊において那珂に次ぐ立場にある艦娘だ。
仕事と言えば、那珂の補佐であり臨時の旗艦などである。
であるから――今回もそうなった。
「…
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