3部分:第三章
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第三章
「やっぱりあれ?寮生なんだ」
「はい、一年生です」
「私先輩と同じ部屋です」
そのうちの一人はにこりと笑って裕二郎に言ってきた。
「本当に奇麗で優しい人で。私一緒の部屋で感謝してるんですよ」
「一緒の部屋だったんだ」
「そうです。一緒の部屋です」
「それが羨ましいのよね」
もう一人はその彼女にこんなことを言うのだった。
「あんないい人と一緒の部屋になれるなんて」
「いい人って」
これまた裕二郎には思いも寄らない言葉だった。
「そうだったんだ」
「クラスでもそうですよね」
「凄くいい人ですよね」
「ええと」
にこやかな笑みの女の子達に問われてまずはどう返答していいのか困惑した裕二郎だった。少なくとも彼は嘘吐きではないのだ。
「それはね」
「あんないい人いませんから」
「羨ましいですよ」
別の娘を華と同室だからと羨んでいたその娘がここでこう言ってきた。
「先輩と同じクラスなんて」
「本当に」
「そうだね」
嘘をつくのは嫌いなので隠すことにしたのだった。大して変わりはないのかもと思ったがそれでもこの選択を選んだのであった。
「うん」
「あの人が先輩でよかったですよ」
「全くです」
彼女達はこう言って華を絶賛していた。このことがどうしても納得できない裕二郎は仲間達にこのことを話した。すると皆は。
「そりゃ何処のパラレルワールドの話だ?」
「嘘だろ」
皆こう言ってその話を信じようとしなかった。
「萩原が優しい?」
「あんないい人いないって?」
「そうなんだ」
こう皆に話す裕二郎だった。
「俺もまさかって思ってるけれど」
「後輩の娘達無理矢理言わされてるじゃねえのか?」
「なあ」
男連中はこう言うのだった。
「絶対そうだよ」
「あんな怖い奴いねえって」
「俺もそう言おうって思ったんだけれどな」
また言う裕二郎だった。
「ちょっとな。言えなくてな」
「そうなのかよ」
「まあとにかくな」
「その話は絶対に嘘だ」
彼等は確信していたのだった。
「俺は信じないからな」
「俺もだ」
「天地がひっくり返っても有り得ねえ」
彼等は口々に言う。
「あいつが優しいなんてな」
「ねえねえ」
「ちょっとそこの男連中!」
言っているそばから華の怖い声が飛んできた。
「ちゃんとお掃除しなさいよ。何やってるのよ!」
「いけね」
「鬼だ」
「誰が鬼よ誰が!」
また華の声が飛んできた。見れば彼女も男連中も華以外の女の子もそれぞれ箒なりモップなり雑巾なりを持っている。そのうえでクラスを掃除している。
「本当に何やってるのよ。つべこべ言わずにお掃除しなさい!」
「わかったからよ」
「そう怒鳴るなよ」
「怒鳴ってなんかないわよ!」
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