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が無造作に置いていった目当ての外套へと近寄り、身を屈めた。外套を手にすると同時に、提督の頭に鋭い痛みが走った。
「あいた!」
提督は手にした外套を手放し、頭を抱えながら慌てて立ち上がって周囲を見回した。一度、二度と見回し、三度目にゆっくり確かめて、やっと足元にある二つの物に気付いた。
提督はしげしげとそれを見下ろした後、屈みこんでそれぞれを丁寧に掴んだ。
「……え、落ちて来た? 何もなかったのに?」
提督が感じた限りでは風も揺れもなかった筈だ。筈だが、事実として今提督の右手と左手にあるそれぞれの物は棚から落ちてきたのだ。
提督は顔しかめながら、それでも確りと二つのそれを確認していく。
目で見た限り、特に破損部位はないと確認してから提督は大きく息を吐いた。そして、それらを本来あった場所に戻して、提督はもう一度屈んで外套を手にした。今回は頭上を気にしながら、だ。
外套を羽織って上へと続く階段の一段目に片足を置いた提督は、ぴたりと動きを止めておもむろに背後へ振り返った。
提督の訝しげな視線の先にある物は、つい最近彼が作り上げ、先ほど彼の頭上に落ちて来た模型である。それらをじっと見つめた後、提督は首を捻って零した。
「摩耶さんと青葉さんに、僕は何かしたんだろうか……?」
提督の言葉に、棚に並べられた軍艦摩耶と青葉の模型は、何も応えなかった。
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