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を照らす為に壁にある電灯のスイッチを探し出し、これもまた無造作に押した。
そして提督の目に飛び込んできたのは、何も無い一室であった。
いや、棚や使われていない備品などが乱雑に置かれている。それでも、それほど広くも無い室内に置かれたそれらは余りに少なく、例えば提督の個室でもある執務室に比べれば、本当に何も無いと言って差し支えのない部屋であった。
提督はそれでも、満足げに頷いて歩を進めた。
少ない備品が置かれた室内で、どこを見ても外套など見つからないそこを歩く提督の脳裏にあるのは、先ほどまで雪風と交わしていた会話の内容であった。
『秘密基地となれば、しれぇはどこに作りますか!』
少女らしい――いや、子供らしい言葉である。奇しくも提督の秘密基地が傍にあるというのに、雪風はそれと知らずそんな話題を偶々出会った提督に振ったのだ。
そして提督の答えを聞くと、雪風にしては珍しく、何度も頷きながら小さな声で零したのである。
『流石神通さんです……司令の好みもばっちりです……っ。一緒です!』
勿論、その言葉は提督の耳にも届いていたが何も知らない提督には意味不明な物である。オスカーを撫でつつ、その辺を聞き出そうとした提督であったが、結局雪風のくしゃみ一つでそれをなせなかった。
ここでもし雪風がくしゃみをせず、提督が寒いから戻りなさい、等と言わずにその辺りの事を確りと問いただしていれば、神通と阿武隈主導で駆逐艦娘達が提督にも知らせず極秘に作った施設が一つ埋められただろうが、流石は幸運艦雪風と不沈猫サムのコンビである。
これをくしゃみ一つで華麗に回避したのである。
そうとは知らぬ提督は、ある備品の前で歩みを止めた。彼の前にあるのは、少しばかり錆びた大き目の棚である。提督はそれを動かして隅にやると棚があった場所で屈みこみ、床の一部をスライドさせた。
細められた提督の目に映るのは小さな階段である。
『そりゃあ、勿論地下だ』
雪風の、秘密基地ならどこに作る、という言葉への提督の回答だ。
提督にとって、秘密基地とはダンボールか土管か穴だ。流石に彼の歳でダンボールに四方を包まれると違った意味で寂しくなってくるし、土管では狭いし、と地下にしたのである。
これもまた、明石と北上と夕張と妖精達の手によって作られた物で、地下へと続く階段の先にある狭い一室は、地下でも模型が作れるようにと空調設備を整えた中々の一室である。
そこには提督の模型以外にも、北上が作った模型の一部が提督の模型ギョーザの隣に置かれていた。
ちなみに、明石の模型は赤穂浪士密談、夕張の模型は横綱土俵入りという、それぞれ提督の作った模型の隣に置かれている。
提督はそれらを笑顔で流し見しながら、過日当人
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