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人に過ぎない摩耶からすれば真っ平御免である。
作戦行動となれば夜であっても同僚もいるし、必要なことでもあるが、日常となれば不必要な行為であるからだ。決して、夜道の脇で風に揺れる草木のざわめきに寒気がするとか、揺れ動く影が別の何かに見えるから嫌だ、などという理由ではない。
――大丈夫……大丈夫……違う違う。あれなら妙高と鳥海の方が怖い……え、あれ、マジであっちの方が怖いぞおい。
現在重巡の旗頭の一人として摩耶達を纏める艦娘の、腕挫十字固を笑顔で決めて芋ジャージを泣かす姿と、妹の眼鏡を光らせた容赦ない夜戦姿を思い出して先ほどまでとはまた違った恐怖に背を振るわせる摩耶は、このままベッドに戻って愛用の猿のぬいぐるみを抱きしめて眠ってしまいたいと思いながらも、なんとか前を見て歩き続けた。
「あぁ、それにしても皆冷たいですねー……摩耶さんだけですよ、頷いてくれたのは」
「……あぁ、そうかい」
頷いたもなにも、頷かされたような物であるが摩耶はそれを掘り返さなかった。タイミングが悪かったのだと思い込むほかないからだ。
と、摩耶は先ほどの青葉の言葉に眉を顰めた。どうにも先ほどの言から見るに、こうなった原因がその頷かなかった”皆”とやらにあるのではないか、と思えたからだ。
そうなると、摩耶としては流すわけにはいかない。
出来うるなら何かの形でこの落とし前をつけさせる為、摩耶はもう少し詳しく聞きだす事にした。
「青葉、誰を誘ったんだ?」
「えーっとですね」
青葉は腕を組んで月を見上げ、一人一人と名前を挙げていった。
「まず最初は、吹雪さんですね」
「へー……吹雪が断ったのか……珍しいな」
「で、次が加古さんで」
「へー……加古もかぁ……」
「その次が古鷹さんで」
「へー……古鷹も……いや、青葉?」
「で、最後が熊野さんです」
「いや、いやいや青葉お前……」
青葉は摩耶の言葉を遮り、組んでいた腕を解いて真っ直ぐに摩耶を見つめながら口を開いた。
「皆さん冷たいと思いませんか?」
「お前、狙ってやったんじゃないだろうな?」
頬を膨らませて、私怒ってますよ、といった相を見せる青葉に摩耶は割りと真剣な顔で突っ込んでおいた。青葉が挙げた名前は、確かに青葉と縁のある艦娘達であるが、それはまた違った意味でも縁深い相手であったからだ。
摩耶としては、落とし前も何もない。むしろ、まぁそうなるな、と無駄に納得できた面子である。
摩耶の突っ込みを受けた青葉は、悲しそうな顔で俯き摩耶に背を向けた。そして、小さな声で呟いた。
「……しかも、頼んでいる最中に何故かオスカーと雪風さんが現れまして……」
「……お、おう」
「それも四度とも」
「全部かよ!」
断られる
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