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執務室の新人提督
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 海に面した市街地からかなり離れた場所に、その施設はある。
 大きな壁に囲まれ、上空から見れば隔離された建造物としか見えないそこは、しかし人類の守り手達が住まう箱庭――鎮守府であった。
 外観は赤煉瓦の、舞鶴旧鎮守府倉庫施設に良く似た造りだ。何もここだけが、という訳ではない。殆どの鎮守府はこれと同じ造りである。

 これは艦娘達と、その主である提督達に軍部への帰属意識を強く持たせる為の物だと言われている。飽く迄その様に世間では囁かれているだけで、肝心の大本営はこれに関して何も語ってはない。ただし、それは否定もしていないと言う事だ。
 まず間違いなくそうなのだろう、と言うのが現状での皆の認識であった。
 
 さて、そんな赤煉瓦の伝統あふるる鎮守府の司令棟にある執務室で、二つの影が寄り添いあって穏やかに言葉を交わしていた。
 
「あれー……こっちにバケツなかった?」
「んー……? バケツだったら……あぁ、上の仮拠点だわ」
「えー」
「この前上で麦畑作ったから、そのままチェストに放り込んだままだ。悪いねー……」
「んじゃ、地下用のバケツも作っておくかなぁ。鉄鉱石余ってたし」
「んー……それもいいやねぇ」

 果たしてこれが伝統あふるる赤煉瓦造りの鎮守府の一室で交わされてよい会話であるかどうかは、是非を問うまでも無いだろう。
 しかし、当人達にとってはこれこそが日常であった。
 二人、提督と駆逐艦睦月型11番艦、望月は互いの手に在る携帯ゲーム機を慣れた手つきで操作しながら、ゲーム機の中の四角い世界を遊び倒していた。
 
 二人が今腰を落ち着けているのは本来なら来客用にと用意されたソファーで、更にそのソファーの前にある小さなテーブルにはポテトチップスやコップに注がれたコーラ、干し芋などが雑に置かれている。
 ここに初霜や大淀がいたなら、苦笑いか眼鏡を光らせていただろうが、生憎とここにいるのは提督と望月だけだ。
 いや、もし居たとしても流石に彼女達も何も口にしないだろう。現在、二人は夕飯前の休憩時間中だ。
 
 確りと働いた上で遊び、それを終えれば二人とも部屋を片付けるのだから、誰も文句はつけられないだろう。その点に関しては、だが。
 
「そーいや、司令官さー……」
「んー?」
 
 気だるげな声で、携帯ゲーム機の画面から目を離さず口を開いた望月に、提督も似たようなテンションで返した。
 
「最近龍驤さんとどーよー……?」
「いや、どうよって言われましてもさぁ」

 こちらもゲーム画面から目を離さないまま、提督は望月が名を上げた軽空母を脳裏に描いた。小柄で、独特なバイザーを被った少女である龍驤は、その外見に反してこの鎮守府の古参であり、鳳翔と共に影の支配者、等とも称される存在である。
 多くの艦娘の進
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