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執務室の新人提督
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水を助け、戦場で支え、私生活でも相談に乗ることが多い姉御肌の艦娘だ。提督にしても、多くの海域で助けられた艦娘であり、全幅の信頼を寄せる一人だ。
 それがどういう訳であるのか、
 
「今日も出撃前にハグされたんだってー? 夕立が言ってたぜー?」
「うん、そのあとその夕立さんにもハグされたんだけれどね?」

 いつ頃からか提督を見るとすぐ抱きついてくるようになってしまったのである。更にそれを真似て、夕立や、今提督と一緒に遊んでいる望月の姉、文月達まで真似始めたのだ。
 しかも最近では、MVPを取った朝潮に敬礼されたあと、抱きついても宜しいでしょうか、と聞かれた程であった。
 少女といえど乙女である。果たしてどうであるのか、と提督自身彼女達に問うた事もあるが、これは今現在もすれ違いのまま終わっている。
 気軽に抱きつくべきではない、という提督の意見も、彼女達は気軽ではないのだから問題は無いのだ。

 これはどうでもいい話だが……文月にハグされる度に提督は、世に文月のあらんことを……などと呟き、更に皐月にハグされた時には、お前の方が可愛いよ! 等と呟いている。心底どうでもいい話だが。もっとどうでもいい事だが、その後皐月が作戦行動中に偶然遭遇した神通似の姫級をきっちりカットイン撃破しておいた事をここに記しておく。

 閑話休題。
 
 この現状でまさに矢も楯もたまらず、といった状況に陥っているのが成熟した女性の体を持つ艦娘達である。
 一度鈴谷が真似て抱きついた際、提督が本気でこれを嗜めたからだ。もっとも、これは提督の照れ隠しと職場に在って彼我の距離を正しく取る為という側面が強いのだが、そこまで読み取れている艦娘は少ない。
 そんな状況下で、自身達は我慢しなければならないのか、と落ち込む一方で、実はそれはそれで、と先を見て納得しても居るのだ。
 
 駆逐艦達が許されるのは、彼女達が見目幼い少女だからだ。彼女達以外が許されないのは、それが提督に女を感じさせるからだ。
 それはつまり、女として確りと意識されていると判断したのだ、彼女達は。
 そう考えれば彼女達としてもある程度納得できるのである。女として意識されるが故にハグが出来ないのなら、今は我慢しよう、という訳だ。今は、だ。
 
「ふーん……そういやさぁ、そろそろ三日月なんかも提督の頭を撫でてあげたいって言ってたぞー」
「あぁ、三日月さんかぁ」

 同じ睦月型であるから、当然同じ寮の同じ部屋だ。その日常の中で望月は姉のそんな言葉を耳にもしたのだろう。
 それを前もって提督に伝えるのは、望月なりの姉への応援であり提督への土産でもあった。提督へは前情報を与え、断るなよと釘を刺し、三日月にはそれとなく大丈夫そう、と後々伝える為である。気だるげで無気力に見える望月もまた、強
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