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執務室の新人提督
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身事ながら妙な感心をした。
 
「ふむ……では、こういうのはどうじゃ?」
「うん?」

 初春はにやりと笑いながら、扇子で自身の頬を軽く二度三度と叩きつつ流し目で長良を見た。余程自信があるのか、と興味を惹かれた長良は身を乗り出して初春の次の言葉を待った。
 
「提督を真似ればよいのじゃ」

 が、初春の言葉はこれである。長良からすれば、いったいぜんたい、何を言っているのかさっぱりという物だ。目を瞬かせながら首を傾げる長良に、初春は掌を見せて頷いた。
 
「まぁ焦るでない。ゆるりと構えよ。そもじはまずそこから、提督を真似るべきじゃぞ?」
「えーっと、司令官の真似……司令官の真似……あぁ」

 初春の言葉に、長良は暫し考え込んだ後掌に握った拳を、ぽんと落とした。そして、初春の艤装をじっと見つめて
 
「不明なユニットが接続されました」
「……なんじゃそれは」

 何故か平坦な、それこそ機会音声かと思えるような声で意味不明な事を言い出した長良に、初春は扇子を顎に当てて首をひねった。真似ろといったら長良のこの様である。
 まさかそんな意味不明さを真似るとは思わなかった初春からすれば、まさに不意打ちであった。

「うん、この前司令官が扶桑とか大和の出撃前の艤装装備姿を見て、さっきの言葉言ってたから。初春は意味が分かる?」
「……いや、どこかで聞いたような気はするのじゃが、はっきりとはせんのう……ふむ」

 長良の応えに初春は考え込むも、やはり彼女の思考はクリアにはならなかった。ちなみに、初春がどこでそれを聞いたかと言えば、自室でスマホを弄りながらやっていた乙女ゲー中に、背後で子日と若葉が遊んでいたゲームから聞こえた物であった。
 乙女ゲーという以上、乙女が嗜むゲームなのだと信じてそちらに集中していた初春は、結局妹達のゲームにまで気が回らなかった訳である。
 まぁ回ったところで無駄な知識が増える程度だったのでなんら問題は無いわけだが。
 
「いや、あんまり提督のそういったところは真似るでないぞ。あれはあれで良いおのこじゃが、一人であるから良いのじゃ。あんなものが増えたら世も末じゃぞ」
「真似ろと言ったり真似るなと言ったり、どっちなの初春?」
「わらわが真似ろと言ったのは、あやつの気の抜けた……まぁ、どっしりと構えたところと日に三度のあれじゃ。奇妙奇天烈なところは真似んでよい」

 そう返されて、長良は提督を目を閉じた。瞼の裏に思い浮かべるのは彼女の提督――司令官の姿だ。常からぼうっとしたいまいちしまらぬ男で、どこからどう見ても凡庸な男だ。ただし、外貌は凡庸でも、口を開くと凡庸ではない。それも悪い意味でだ。
 そういった男であるが、確かに初春が言うようにこの鎮守府の主が焦った姿など長良は知らない。実際には
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