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いい扶桑姉妹、こちらも何故か仲が良い子日がいる初春姉妹等々と、そして先ほどまで瑞鳳と共に倉庫で仕事をしていた千歳も、その一人だ。
一品増えた程度では困らないし、場合によっては調理も手伝って貰う事もあるので、むしろ彼女としては助かっているとも言えるだろう。
であるのだから、普段の行動を背景に交渉すれば、玉子焼きくらいは作らせてもらえると思えるのだが、何故か瑞鳳はそれをしない。
まさかそんな事に気付いていないという事はないだろうから、これは瑞鳳の個人的な拘りなのだろうと千歳は思うのだが、それでも不思議な物は不思議だ。
暫し、そんな事を考えていた千歳は、自身の昼食の為にと大淀の執務室へ足を向けた。手に在る二人分の仕事の成果――書類を渡して報告を終えてから食堂に行く為だ。
そして彼女が大淀に報告を終え、廊下に出ると瑞鳳と鉢合わせした。
「あぁ、報告ありがとう。大淀はなんて?」
「ありがとうございます、って」
大淀の執務室前であるから、瑞鳳は千歳が何をしていたのかすぐ理解できたのだろう。うんうんと納得したように頷く瑞鳳の相を確かめてから、千歳は一つ問うた。
「今日は成功したの?」
「うん、そりゃもう大成功よ! むしろ感謝されたもの!」
「そうなの、大成功じゃない」
喜ぶ瑞鳳に、千歳はやっぱり、と微笑んで頷いた。
玉子焼き一つ、されど玉子焼き一つ。
瑞鳳という少女は、調理時に他の姉妹艦娘達の中に紛れ込んで玉子焼きを作れなかった場合、穏やかならぬ顔でがるるるると唸っているのだ。
今回、それが無かったという事は成功したのだろうと千歳は考えたが、念の為問うて見たのである。
そして、感謝された、という部分も千歳には聞くまでも無く理解できることであった。
「まったく、相変わらず凄いの作ってたから、ちょっと手直しと監視して時間掛かっちゃたし」
「なるほどね……あぁ、そうそう瑞鳳」
ん? と瑞鳳は千歳に目を向けた。子猫の様な丸い瞳である。
その瞳に映る自身の顔に、千歳は微笑を見せた。
「お昼、今からなら一緒出来るでしょう?」
「……うん、じゃあ行こうか」
二人は並んで歩き始めた。千歳は隣を歩く楽しげな瑞鳳を見て目を細める。楽しげな誰かの存在は、それを見る者まで喜色に染める物だが、瑞鳳のそれはまた格別だ。
それだけ今回の成功を喜んでいるのだろう。だがしかし、千歳には言いたい事があった。
しかしそれを伝える事で瑞鳳の笑みが翳るかもしれないと思うと、千歳にはなかなか伝え難い物でもあった。
結局、その日千歳がそれを口にする事はなかった。さて、では千歳が瑞鳳に何を伝えたかったかと言えば、実に簡単な事だ。
――で、いつまで金剛型の服着ているの?
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