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からウインナーを掴み、それを咀嚼しながら隣でお茶を飲み始めた瑞鳳を見た。
錬度は、既に千歳以上である。軽空母の順位で言うなら、龍驤、鳳翔、祥鳳に次ぐ第四位だ。軽巡、駆逐の様に四天王と称される物がもし軽空母にも当てはめられるなら、瑞鳳はその一人になる。
海上での仕事は堅実で、龍驤の様な苛烈さも、鳳翔の様な緻密さも、祥鳳の様な冷静さもないが、手堅い情報収集と制空権掌握には、千歳も何度か助けてもらった事が在るほどだ。
陸上での仕事も正しく堅実だ。瑞鳳という艦娘は地味な仕事でも、飽きは見せてもミスは見せない。
得難い、本当に得難い艦娘であるが、先輩である千歳としては複雑に思う事もあるのだ。
千歳の顔からそれを読み取ったのだろう。瑞鳳はお茶の入ったペットボトルのキャップをしめて、千歳に問うような眼差しを向けた。ある程度は読み取れても、それは確実なものではない。提督と山城の様に、目を合わせたらお互いの事が全部分かる、という方がおかしいのだ。
瑞鳳の視線を受けた千歳は、苦笑の色を濃くして肩を落とした。
「心配でもあるの。瑞鳳はいつも動き回っているでしょう? ちゃんと休めているのかしら、って」
千歳にとって瑞鳳は後輩だ。自身より強くとも、自身より要領がよくとも、瑞鳳という後輩は体つきが小さな一人の少女である事に違いは無い。
故に、いつも思うのだ。果たして、それで大丈夫なのだろうか、と。
「ありがとう、千歳。でも大丈夫」
「……でも」
「ううん、本当に大丈夫。私が出来ることで、皆と提督を支えたいだけだから、これはわがままなの。千歳が気にする事じゃないよ」
にこりと笑うその瑞鳳の相が、まるで自分達の先輩である龍驤の物にも見えて、千歳は小さく頷き返した。それは恐らく、何か一つの壁を越えた艦娘だけが持ちえる意志の輝きなのだろう、と千歳は感じとったからだ。
例えそれが千歳の勘違いであっても、今彼女はそれを信じた。目の前の少女には、そう信じさせる強さがあったからだ。
「それに、本当に疲れたときには部屋で、ぐでーってしてるから、大丈夫大丈夫」
「ぐでーって」
「ぐでーってしてるよ?」
「……あぁ、ぐでー、ね」
実際にベンチで横になって白目を剥く実演中の瑞鳳に、千歳は笑顔で返しておいた。彼女もまた古参の一人である。その程度の奇行は十分笑顔で対応可能なのだ。
流石はこの鎮守府の水母系任務を支えてきた片翼――千歳であった。それを流石と称えられたとしても、千歳は多分喜ばないだろうが。
千歳は残っているコンビニ弁当を、素早く口に運び、お茶を含んでそれを嚥下した。空になったペットボトルと弁当箱を、近場のゴミ箱に入れて瑞鳳に顔を向ける。
「じゃあ、残りを速く終わらせましょうか」
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