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執務室の新人提督
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 ちなみに、この第三者が球磨、大井、木曾であった場合、あぁいつもの事か、と普通に流す。姉妹からすれば見慣れた物なのである。
 
「たしか、この前酒保で買ったお菓子があったはずだにゃー」
 むくり、と起き上がっていつもそれらを仕舞っている棚を多摩は見た。が、こちらもむくりと起き上がった北上が、自身のお下げを弄りながら首を横に振った。
 
「そんなものは、この前この北上さまが貪り食ってくれたわー、うははははははー」
「おうお前ちょっとこっち来るにゃ」
「えー……めんどくさい」
「多摩もそっち行くのめんどくさいにゃ」

 本当に良く似た姉妹である。片や窓際から動かず、片やベッドから動かない。ぱっと見、着ているいる制服も顔の造りも違うのに、この二人はそっくりだ。
 
「じゃあ、間をとってスーパー多摩にゃんさまがアルキメンデス買ってくる、でどう?」
「いや、そんなもの頼まれたら明石も泣き出すにゃ。というかどういう間なのかにゃ、それは」

 二人とも眠たげな相で交わす会話は、実に独特である。大井とはまた違った独特さであるが、二人が大井の姉であることが良く分かる内容であった。
 
 どうでもいいだろうが、アルキメンデスとは80年代に発売されたインスタントのあんかけかた焼きそばである。高価な割には余り味のよい物ではなく、2年ほどで市場から消えた不遇のインスタント食品であるが、その試みは十分に評価されてよい物であった。惜しむらくは200円という値段に対し、味を追求し切れなかったという事である。
 それさえクリアすれば、或いは今でもスーパーの棚に並んでいたかもしれない物であった。裕福な時代という物は様々な――本当に様々な意図が読み取れない摩訶不思議な物まで生み出すが、アルキメンデスもまた80年代という現代のカンブリア爆発の中で生まれ、そして悲しくも消えていった悲運の存在であるのだ。
 
「んあー……とーおー、っと」

 意味不明な掛け声で、北上はベッドから立ち上がって絨毯に降りた。そして何故か自分のお下げを振り回した後未だ絨毯に座ったままの多摩へと近づいて行く。足取りは重くも軽くも無く、まったくの普通だ。
 
「んにゃー……来たな馬鹿妹め。姉の怒りの鉄拳を食らうがよいにゃー」

 ほわた、と多摩が北上の額に繰り出したのは、手刀であった。当たった時に、ぺち、と音がする程度の物である。
 
「えー……鉄拳じゃないしさー」
「うむ、現実ははいつだって理想とは違うもんだにゃ」
「多摩にゃん的にはどんな現実だったのさ?」
「うむ、こう、当たったらどごーんって感じだったにゃ」

 おー、怖い怖い、と返して北上は肩をすくめて多摩へ手を伸ばした。多摩はそれを問うことも無く、躊躇無く差し出された手を掴んだ。
 引き起こされた
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