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執務室の新人提督
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だよー、多摩にゃんはしっかり猫草とかも食べないとぽんぽんこわすよー?」
「んなもん食べないにゃ。あと多摩にゃんじゃねぇにゃ」

 多摩は北上にそう言うと、開けていた窓を閉めて室内を見回した。
 今この部屋にいるのは、北上と多摩だけである。他の姉妹たちはそれぞれの用事で出払っているのだ。
 五人の部屋として用意された室内は思いのほか広く、二人だけしか居ないとどこか寂しげだ。が、そんな状況でも二人はマイペースであった。
 多摩は腕を天井へ伸ばして欠伸を零し、北上は読んでいる本を一定の間隔でめくるだけである。そこに寂しい、などといった感情はまったく見られない。
 
「んで、球磨ねーちゃんが出撃で、大井が?」
「ん、比叡と一緒に散歩だってー」
「んにゃ。で、木曾は?」

 ここに居ない姉妹達の確認をしながら、多摩と北上は互いにポーズをとりながら言葉を交わしている。ちなみに事の時の二人のポーズは、背伸びと寝転んだままのポーズだ。
 
「んあー……木曾は、今度こそ提督を口説くんだって、花壇に花を取りにいってた筈だよー」
「わが妹ながらちょっと間違ったイケメンだにゃー」
「だねー」

 妹の奇行をその程度で流せるのも、姉としても余裕なのだろう。或いはもう諦めているだけかもしれないが。
 恐らくその花を差し出して気障な台詞でも言うつもりなのだろうが、それは男女逆の行為であるしなんというか古臭い物である。それでも、そんな行為が似合うのもまた木曾というおっぱいがついたイケメンなのだ。
 
「んで、多摩にゃん」
「多摩にゃんじゃねぇにゃ。姉をちっとは敬うにゃ」
「いやー……とか言っても、多摩にゃんだって球磨ねーさんを敬ってないっしょー?」

 北上の言葉に、多摩はうんにゃ、と首を横に振って、ぴしっと指を一本立てた。
 
「多摩は球磨ねーちゃんをしっかりかっちりぽっきり敬ってるにゃ」
「えー……どんなところ?」

 多摩は立てていた人差し指をふりふりと振って、本から目を離して自身を見つめる北上を真っ直ぐ見返した。
 
「お弁当作る時とか、野菜の余る所まできっちり使い切るところとか、洗濯の時にはかっちりお風呂の余り水使うとか、無駄な買い物をしないところとか、多摩はすげーなねーちゃんって思ってるにゃ」
「お、おう」

 北上の予想に反して、多摩が球磨を敬うところは実に地味なところであった。少なくとも戦果や戦闘能力を仰ぎ見ている様な気配は、多摩には無い。妹である北上から見てもないのだから、これは誰が見ても同じだろう。
 実際、多摩の発言は本心からだ。裏も無ければ探っても無駄な物である。
 
「ちょっと前のスイカの漬物なんて、多摩は感動だったにゃー」
「あー……あれ美味しかったよねー」

 とろんとした相で天
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