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所変われば品変わる。南橘北枳。といったもので、艦娘も例外ではない。
総じて面倒くさがりではあるが、それだけが初雪の全てではないのだ。
山城だってみんながみんな、五寸釘だの藁人形だの血糊だの白装束が似合うわけではないんじゃないだろうか多分。
「……面倒くさがりで引きこもりがち……いやぁ、これを公的に発表しちゃう方も方だけど、それでいいやって放置してる初雪さんも凄いなぁ……」
「まぁ、大抵の初雪は自分の仕事をしっかりやれば、あとの評価はどうでも……とか思っているのかもしれませんね」
「あぁ、それっぽいなぁ」
提督は自身の初雪を思い浮かべて笑みを零した。
この鎮守府にいる初雪は、確かに明石が言うようなところがある。その結果が駆逐艦のエースの一角であるのだから、明石の言は提督としては納得の物だ。
模型の側面に書かれているような、面倒くさがりで引きこもりがち、と言った文は親しみを求めて書かれたものだろう、と提督は一人頷いた。
少なくとも、眠たげな目のまま深海棲艦を葬り姫級相手でも一歩も引かない支援上手、などと模型の箱の側面に書かれるよりは、余程ましである。
勿論、そんな初雪はこの鎮守府にしかいない非平凡的初雪であるし、そんな情報は提督の知らぬことである。
「うん、じゃあ今日は初雪を貰おうか」
「はい、今日もこの後港の倉庫で?」
「だね。まぁ、アレが今の僕の秘密基地だからねぇ」
にこりと笑う提督に、明石も笑みを返した。
提督がこの酒保で購入した模型を組み立て、保管するのは使われていない港の倉庫だ。空気が篭らないよう確りと調整、管理された場所である。
提督はそこを、秘密基地、などと称したが秘密でもなんでもない。少なくとも、今こうして明石は口にしたし、一水戦の護衛メンバー、潜水艦達も知っている場所だ。
それでも、そこは提督の秘密基地である。
そこには提督以外誰も入ったことがなく、誰もその倉庫の中を知らないのだから、そこは誰がなんと言おうと提督の秘密基地だ。
提督が模型を執務室で作らず、また口止めを頼んでいるのは、前に『いつもの』が流行ってしまった事が原因だ。彼としては、自然と流行した物であれば何もいう事は無いのだが、流石に自身の影響一つで艦娘達が動くことをよしと出来なかったのである。
彼が愛した艦娘達は、そのままの艦娘達だ。そこに提督の色など必要ないのだ、彼からすれば。染められたい彼女達と、染めたくない彼のすれ違いはいっそ喜劇的ですらあるが、当人達は大真面目である。
「じゃあ、また来るよ」
「はい、ありがとうございました」
購入した駆逐艦初雪の模型を胸に抱き、ジュース二本が入った袋を空いた手でぶら下げ提督が酒保から去っていく。
明石は閉ざされた扉を暫しじ
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