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がこの鎮守府の戦力に関わる事であるなら、尚更だ。
果たして、自身の応えに提督はどの様な相を浮かべるだろう、と飛龍は提督の顔を窺った。
飛龍の目に映るのは、ただ葛城の細い肩を見つめる提督の透明な目だ。そこに、葛城の現状に不満があるようには飛龍には見えなかった。
それでも、飛龍は今後の葛城に何かあってはと考えて口を開いた。
「私の指導不足です。全ては私の不手際で――」
言い続けようとする飛龍に、提督が掌を見せた。不快にさせたか、と慌てて飛龍が顔を上げるも、やはりそこにある提督の顔は常の通りだ。いや、透明な双眸は更に深い色に染まり、穏やかな物になっていた。
一瞬高鳴った胸を全神経を稼動して押さえ込み、飛龍は指導艦としての相を維持した。
「大丈夫だよ。葛城さんは」
「……え?」
しかし、その相は脆くも崩れた。提督の一言で崩れるのは、強度が足りなかったせいか、それとも飛龍にとっては重い一言で在ったからか。
提督は、的を外しても矢を番える葛城の背を見たまま、肩をすくめた。
「葛城さんがどんな艦か、僕は良く知っている……つもりだ。最後の最後、鳳翔さん達と一緒に頑張った彼女が、こんなところで躓くものかよ」
言葉を紡ぐ提督の相貌は、まるで子供の様に無邪気だ。目には先ほどまであった穏やかよりも、きらきらとした輝きが強く宿っていた。
本当に子供の様な顔だ。
目を瞬かせ、提督の顔をまじまじと見つめる飛龍の耳に、提督の声はまだ続いていた。
「それに、姉に当たる様な飛龍さんがしっかり指導しているんだから、僕としては不手際なんて感じられないよ」
飛龍と提督の目が、合った。
提督の目は、まだ無邪気な少年の物であった。
「うん、おいしい、おいしい」
ぱくぱく、と勢い良く料理を口に運ぶ彼女――飛龍の姿に、隣に座る蒼龍が顔を引き攣らせていた。飛龍が満面の笑みで口に運ぶ料理は、すでに常の量を大きく超えている。
それでも飛龍に止まる気配がないのだから、ほぼ同型ともいえる蒼龍としては顔も引き攣ろうという物だ。
「……何かあったの、飛龍?」
彼女達の前に座る加賀が、流石に常と違う飛龍を見て問いかけた。ただし、その声音に心配の色は見えない。満面の笑みで食事を摂る飛龍であるから、飽く迄加賀のそれは確認だ。
葛城の訓練後であるから、飛龍も空腹だったのかと皆思うのだが、普段は訓練後の飛龍といえば沈んだ顔でいる事の方が多い。
厳しい訓練に、また葛城に嫌われた、と一人勝手に落ち込むからである。その癖指導艦を降り様ともしないのが、如何にも飛龍らしくあった。
そして、葛城から指導艦の交代願いがない事が何を意味するのかを気付けないのも、飛龍らし
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