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」
「提督相手にしか言えないクマ」
じっとりと言い放つ球磨に、提督は困惑顔だ。彼としては普通に接しているだけである。
少なくとも、良い値段で売り飛ばしてやろうなどとは一切考えていないのだから、今の球磨の視線は彼にはまったく関係ないものだ。彼自身の考えでは、だが。
「……まぁ、いいクマ」
と、球磨は相をころりと変えて笑顔になった。そのまま、提督の前まで歩み、椅子に座る提督を見下ろした。何事か、と見上げる提督の顔を球磨は両手で挟んで、むにむにと揉みだした。
「いや……これなぁに?」
「んー……よいぞよいぞー」
「それ姉妹の台詞ですらないだろう」
提督の突っ込みに、球磨はさらに笑みを深めた。心底から、という笑みに提督は暫し言うべき言葉を奪われた。
「うんうん、流石ポスト鳳翔さんクマ。よいぞ、よいぞー」
「……あぁもう、なんだっていうんだ、これはもう」
口にして、しかし提督は球磨の手から逃げようとはしていない。上機嫌、といった球磨の相をみてしまった彼には、その手から抜け出せないのだ。抜け出せば、きっとこの顔が雪の様に溶けて消えてしまうのだから。
「で、提督はいったい何を考え込んでいたクマー?」
「……んー」
球磨の余りに直截な言葉にも、提督は特に顔色を変えない。
或いは、これこそが正しい意味での、適当な道だったのではないか、と心中でため息をつく球磨に、提督ははっきりと応えた。
「いや、あの体格差だと色々大変だろうなぁ、って」
「提督は本当に愛すべき馬鹿だにゃー」
妹の真似をして、球磨は提督の頭を叩きつつ、胸にかき抱いた。
その後、部屋に戻った際妹の多摩に
「あ、おかえrねえちゃんめっさきらきらしとる……めっさきらきらしとる」
といわれた事を記しておく。
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