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執務室の新人提督
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中という事になるほぼ全ての艦娘が訓練に参加することになったのである。
 無論、それぞれの艦種に合わせた訓練であるが、合同である以上それぞれ枠を越えた訓練となる筈だ。
 
「ほらもー! そんなんじゃアイドルになれないぞー! 山城、アイドルになれないぞー! やまっちー!」
「私は……! アイドルに……! なるつもりは、ありません……!! っていうか……! やまっちって誰!」

 再び窓から飛び込んできた遠くからの声に、提督は肩をすくめて窓を閉じようとした。が、それを遮った者がいる。
 
「あ、あの……!」

 睦月だ。
 彼女は声を上げたが、それ以上は続けなかった。自身の提督、巨漢提督を強い眼差しで見る。その眼差しを受け止めた巨漢提督は、僅かに首を縦に振り、提督へと目を移した。
 
「私の睦月の発言を、許してもらえますでしょうか?」
「え、あ、あぁ……どうぞどうぞ」

 ぎくしゃくと、それでも確りと頷いた提督に一礼し、巨漢提督は睦月を促した。
 睦月もまた提督に一礼し、一度息を整えてから続きを口にする。
 
「その訓練、見学させて貰っても宜しいでしょうか?」

 睦月は常の相もかなぐり捨てて、ただ真剣に提督に問うた。提督はこの睦月を知らない。それでも彼は自分の睦月を良く知っている。マイペースで、どこか飄々としたところもある艦娘であるが、彼女は姉妹想いだ。長女として睦月という少女は理想的な存在である。
 この睦月もそうであるなら、それはきっとここに居ない妹――如月の為なのだろう、と提督は考えて頷いた。いや、頷こうとした、である。
 
「で、でしたら雪風もお願いします!」

 勢い良く手を上げる雪風に、少年提督は何も言わない。つまりそれは、その意見に賛成という事だろう。
 提督はなんとなく、本当になんとなく自身の秘書艦、初霜の顔を見た。
 初霜は提督の視線を受けて頷いた。
 
「では、お二人のスポーツウェアも用意しましょうか」
「え、見学だけじゃ?」

 そう呟いた提督に、初霜は首を横に振る。
 
「見学だけで終わるとは、私には思えません」

 その言葉に、三人の提督は睦月と雪風を見た。視線にさらされた二人は、その視線に戸惑いがちでこそあるが初霜の発言を否定してない。つまりそれは、初霜の言に妄は無いという事だ。
 巨漢提督は小さく唸ったあと、提督へ静かに問うた。
 
「その……よろしいでしょうか? 私としても、それが睦月の為になるなら参加の許可を頂きたいのですが……」
「僕も、雪風がもっと強くなれるのなら、是非お願いします!」

 またも頭を下げだした二人に、提督は苦笑のまま返す。これが何か思惑ありげな人間相手なら彼としても断れるのだが、少年提督は勿論、初対面の巨漢提督にもそういっ
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