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「はっ! 第一水雷戦隊及び第二水雷戦隊所属、秘書艦の初霜であります!」
提督の紹介に、初霜は背を伸ばして綺麗な海軍式敬礼を行った。それを見た艦娘達は、自身の提督に目で問うた。答えは両者共に同じだ。
「第二水雷戦隊所属、雪風であります!」
「第一水雷戦隊所属、睦月です!」
初霜と変わらぬ、甲乙つけ難い美しい敬礼だ。少年提督も、巨漢提督も相を覆うのは笑みである。自身の艦娘達の名乗りに、初霜に劣らぬ気迫を感じ自然と笑みを浮かべたのだ。
少々軽くなった室内の空気に、提督は小さく息を吐いて初霜に問うた。
「片桐中尉の案内は、大丈夫でしたか?」
「はい、そちらは伊良湖さんが任せて欲しい、と」
「……すいません、うちの片桐が」
「あぁ、いえいえ、むしろこっちこそすいません」
またも頭を下げる少年提督に、今度は提督も頭を下げた。
執務室に案内しようとした際、片桐中尉は提督達の邪魔になるとこれを断ったのだ。彼は普通の海軍士官であって、提督ではないからだ。
であれば、と提督は片桐中尉に希望を聞いて、甘い物が食べたい、と言った彼を甘味処へ案内するように初霜に命じたのだ。
「片桐はその、甘い物に目がないもので……」
「いえいえ、これくらいは。片桐中尉には、僕もお世話になっていますから」
提督の言葉は世辞や社交辞令ではない。実際提督は片桐中尉に世話になっているのだ。
居酒屋で相談にのってもらった回数など、もう両手に届こうかという状態だ。常識的な海軍士官で、人当たりの良い片桐中尉という人材は提督にとって、この世界を知る上で得難い存在であった。
「もっと速く走り抜けなさい! 捕捉されますよ!」
「もー……っ! 髪が崩れちゃうじゃなぁーい! 神通のばかばかばかぁー!」
突如、執務室にそんな声が響いた。遠くから飛び込んできた様なそれに、雪風と睦月は目を瞬かせ、少年提督と巨漢提督は興味深げな目で提督を見た。提督は首筋を叩いて壁に備え付けられた時計を見上げて、口元をゆがめ窓へと視線を移した。篭りがちな空気を入れ替える為、まだ朝と夜以外は暖かいからと空けていた窓の向こうからは、少女達の声が聞こえてくる。
「あー……初霜さん、この時間あたりだっけ?」
「……はい。神通さん待望の、合同訓練です」
「アブゥ……南無」
初霜の言葉に、提督は窓に向かって手を合わせた。今日は来客があるため、鎮守府は事実上開店休業だ。であれば空いているその日に待機している艦娘達に訓練を、と訴えたのは神通や妙高達であった。
彼女達の身体能力、各技能の上昇は鎮守府の為、提督の為必要な事であった。盾であり矛であり車輪であり杖であり弓であり矢である。
それらは鋭く速くあるために手入れが不可欠だ。結果、待機
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