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執務室の新人提督
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尉に頭を下げる。
 
「先に頼んだのは私です。それくらいは果たすべき事でしょう……それに」

 と、頭を上げた彼は、大作りな顔に少しばかりの困惑を浮かべてそこで一旦言葉を止めた。付き合いの長い少年提督から見れば、巨漢提督にしては珍しい相である。
 どう口にした物か、と迷う巨漢提督の為に、続きを口にしたのは彼の睦月であった。
 
「如月ちゃんも行きたいって言ってたんですけれど、如月ちゃんちょっとテンション高くなり過ぎてたんで、睦月で丁度良かったんですよ。ねー?」

 最後は、自身の提督へ同意を求める物だ。巨漢提督は睦月の言葉に黙って頷いた。
 遠征で助けられて以来、如月が少しばかり落ち着かないのは事実であるし、そんな艦娘を連れて行くわけにはいかないからだ。
 相手がそれを許したとしても、失礼は失礼である。人と人、もしかすればそのまま鎮守府と鎮守府の付き合いになるかもしれない相手なのだ。
 最初のボタンを掛け間違うような真似だけは、巨漢提督もしたくなかったのである。
 
「んー……先輩の考えもなとなく分かりますけど、まぁ、なんというか。多分それはそれで受け入れるような気もするかなぁ……あの人だと」

 少年提督の評を耳にした巨漢提督は、もう少しその辺りを聞こうとして止めた。
 バンが緩やかになり、窓から見える施設の門前に、一人の男と一人の艦娘の姿を見たからである。
 
「あとは、ご自身で……という事ですよ」

 口元を微妙に歪めて笑う片桐中尉に、巨漢提督は黙って頷いた。その穏やかな双眸に、どこにでも居るような男の姿を映して。
 
 
 
 
 
 
 
「どうも、これお土産です」
「これはどうもどうも」

 少年提督から差し出された包みを受け取って提督は頭を下げた。そして、その少年提督の隣でじっと静かに佇む巨漢提督を見上げる。純粋に驚く提督の相に、少年提督は笑みを湛えて隣の巨漢提督を紹介した。
 
「こちらが、この前伝えた――」
「あぁ、どうも。何やらうちの如月が、ちょっとその……やったみたいで。この鎮守府の提督をやっている――」
「痛み入ります。私は――」

 提督同士が互いに自己紹介をし、そのまま頭を下げる。特に巨漢提督の礼は深い物であった。
 提督には襟にある階級章など見分けもつかないし重さも理解できていない。それでも、深く頭を下げる男が、自身より年齢も階級で上であるという事は、事前の報告で理解していた。
 
「やめましょう。僕の如月も、あなたの如月達も無事だった。それで良いじゃあありませんか」

 提督がそう口にすると、巨漢提督が顔をゆっくりと上げた。穏やかな双眸でじっと自身を見つめる彼に、提督は肩をすくめて見せた。
 
「僕らがお堅いままだと、落ち着けないじゃない
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