はて迷外伝 最強の剣と最強の盾3rd
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かった。母親は「父親に似たんだろう」と苦笑いしていたが、その瞳に微かな不安が宿るほどに、彼女には母親の面影が無かった。
後に「本当は血が繋がっていない」などと陰口を叩かれ、よく近所の子供と喧嘩をしていた記憶がある。
次に、性格。
キャバリエル一家は人と人の仲を取り持つのが得意なゆったりとした人ばかりだったのに対し、アーサーはとにかく多動だった。自分の部屋に籠って本を読んでいると思ったら窓から飛び出して野山を駆け、喧嘩っ早くて男勝り。夕方になると泥塗れになりながら木刀片手に帰還して母親に甘えるといったおてんば娘だった。
彼女が頭に付けているカチューシャは、「自分が女であることを忘れさせないため」と母親に渡されたプレゼントらしい。
他にも、剣術を習ったことがないのに村一番の剣の腕だったり、ワガママで人の話を聞かないように見えて正義感は強かったり、勉強には余念が無かったり……思えば彼女は親どころか村の誰にも似ていなかった気がする。
アーサーには少女相応の無邪気な面と、何か明確な目的に動く意志が同梱していた。
その原動力になっていたのが彼女の夢――「王様になる」だった。
不思議な事に、アーサーの母親は一般には出回っていないような難しい本をたくさん持っていた。貴族が読むようなマナー本、治世に関する本、哲学本、武術指南書、百年戦争の戦史記録……幼いころのアーサーは母親にせがんでこの本の内容を教えてもらい、あっという間に難しい言葉を覚えて自分で読みふけるようになった。恐らくこの頃からアーサーは王というものに憧れていたのだろう。
それが年を追うごとに「女王になる」になり、「王国型ファミリアを作る」になり、「オラリオで手柄を上げて王国を作れるファミリアを育てる」という具体的な物になり、最終的に「王国を作るに当たって家臣が着いてくるような力強さを持った『剣王』になる」に落ち着いている。もしかしたらこれから更に変わるかもしれないが、とにかくアーサーは夢を追う事に関してはどこまでも本気だった。
「まいったなぁ………相対経験値なんて聞いてないよ。行動指針を一から練り直す必要があるかな。どう思う、ユーリ?」
そんな彼女は今、風呂上りの火照った体を冷やすように窓際で月を眺めている。
顔立ちはすこし子供っぽいが、憂いを帯びた彼女の表情は年齢不相応に凛々しく感じる。
……まぁ、自分の君主になる大切な王様なので、ちょっとは大人びていないと困るのだが。
今のアーサーの計画では、俺とアーサーは早い段階で、出来るだけ二人同時にレベルアップを果たすことになっている。
これは単純に早く強くなりたいというだけではなく、眷属が二人しかいない【トール・ファミリア】の――ひいては自分の将来の臣下となる新たなる仲間を呼び
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