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鎮守府の司令棟――提督の執務室と大淀の執務室がある、いわばこの鎮守府の本部とも言えるそこは、廊下が長い。様々な、必要な施設などを用意していくと、どうしてもこの司令棟の内部が過密になり、その結果廊下が長くなったと理解している初霜でも、やはり辛いものはある。
特に初霜は駆逐艦娘の中でも小柄な少女だ。歩幅もそれに準じて小さい。
かと言って、初霜は余程の事情がない限りこの廊下を走る――或いは小走りでも、だが――つもりもなかった。
ここは提督の居る鎮守府の心臓部である。そこを喧騒で冒すつもりは初霜にはないのだ。
であるから。
「あぁ、いたいた初霜!」
「川内、そう走るものではないぞ」
今自身に走りよってくる川内と長月には、それ相応の事情があるのだろう、と初霜は考えていた。
「おはようございます、川内さん、長月さん」
「あ、おはよう」
「うむ、おはよう」
初霜の挨拶に、川内と長月が返す。そして川内が初霜の肩に手を置いた。
「初霜、ちょーっとうち――三水戦で航路確保の任務があるんだけれど、出るはずの卯月が馬鹿やっちゃってさぁ……誰か今日空いてる奴いないかなぁ?」
川内の懇願に、初霜は川内の隣にいる長月に目を向けた。川内が名を出した卯月とは、長月の姉にあたる駆逐艦娘であるからだ。
初霜の視線を受けた長月は、眉間に皺を寄せて俯いた。
「すまない……川内の言う通り、事実だ」
「あの……何があったのか聞いても?」
苦しそうな、本当に苦しそうな長月に悪いと思いながらも、初霜は問う事にした。航路確保などの作戦行動は前日から準備されて通達する物だ。となれば、卯月が出撃できない理由は急な事情である筈だ。体調不良や怪我であれば今後のシフト調整の為聞き取りが必要であるし、風邪ならば程度によっては軽い隔離処置も必要だ。
ここがどれだけ独特な鎮守府であろうと、軍である事に違いはない。万が一にも、体調を崩す病の蔓延等あってはならない事なのだ。
「卯月が……如月のその、なんだ……勝負下着という物を馬鹿にしてな」
「あ、はい。大体分かりました」
実に独特な鎮守府であった。恐らく、その事で怒った如月に霧島直伝の格闘術を叩き込まれたのだろう、と初霜は考えた。正解である。
「まぁ、その顔だと大体分かっているだろうが……その後、如月のいいパンチを目にした皐月が、決闘を申し込んでな……」
初霜の想像の斜め上であった。次女と四女の完全なワンサイドゲームで気を昂ぶらせた五女の登場など、普通思いつかない。思いつかないのだが、何故かそれが皐月らしいとも思える初霜でもある。
「そのまま如月と皐月の模擬超接近戦闘がはじまって……菊月が泣いて止めるまで、止まらなかったんだ……」
「菊月
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