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をし、それなりの錬度を得、それなりの艦娘となった。
誇れる物がない、そんな如月が。
最高になりたいとまで思うほど、如月は傲慢でも無知でもない。駆逐艦には駆逐艦の限界があり、旧式には旧式の限度がある。それぞれに個性があるように、それぞれに向き不向きがあって、皆それぞれ在り方がある。
如月は、それなり以上にはなれない艦娘だ。師を持って足掻けど、やはりそれなりからは脱していない。
だが、それなりだからと言って泣くつもりはないのだ。彼女はもう昔の彼女ではないのだから。艦ではなく艦娘であり、提督から与えられた、それなり、を返す為に彼女は今ここに在る。それなりでもまだ上を見て、それなりでも進んで。泣いている暇なんてこの如月にはないのだ。
非力な、無力な、史実に何も誇りがない駆逐艦はここにはもう居ない。居ない筈なのだ。
「違う如月は、まだそこまで司令官に愛されてないんだよ。じゃあ後で愛されるのかって言われりゃ、深雪の知ったことじゃないけどさ」
深雪は見上げていた空から、隣に居る如月に目を移した。深雪の双眸に、憮然とした如月の相が映る。
「あぁもう……深雪相手だと、皆に言えない事でも言えるから厄介だわ……」
「その辺は睦月に文句いえよー? 深雪は見に来ただけだからな」
「はいはい」
嫣然、とはいかない幼い笑みを浮かべ、如月はベンチから腰をあげて小さく背伸びした。深雪と話をしていただけで、もう彼女の中にあった違う彼女の姿は殆ど消えていた。
だから本当に厄介だ、と如月は未だベンチに座る深雪を一瞥した後、一歩一歩確かめるようにゆっくりと歩き出した。
「あ、おい、どこ行くんだよ!」
慌ててベンチから立ち上がり、ゴミ箱に缶をすてる深雪に、如月は振り返らずに応じた。彼女が目指す女性的な笑みも捨て、にやりと不敵に笑いながら。
「気晴らしに、もう一回遠征に出て二三隻沈めてくるわ」
力強く握った拳を掲げて振る如月の後姿に、深雪は乱暴に頭をかいて零した。
「あぁ、やっぱり霧島さんの弟子だよなぁ、あいつ」
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