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だ。無理をしている様子も、気遣う素振りもそこにはない。
先ほどまで、如月は姉や妹達と遠征任務に出ていた。いつもと変わらぬ遠征は、偶然の交戦で常と違った物へと変わってしまったのだ。別鎮守府の、友軍の危機を見てしまったからだ。
当然、如月達は友軍を助けた。交戦していた深海棲艦は特に強力なモノでもなく、駆逐艦娘四人で殲滅可能なモノでしかなかった。
ただ、その時から今まで如月は不安定であった。
――気にして、睦月ちゃんが深雪に頼んだんでしょうねぇ。
如月の隣に当然と座る深雪は、少女の姿として見れば如月とは遠い存在だ。お互いに違いすぎる。少女であることに意識が向かない深雪と、女を磨こうとする如月は別方向にすら向かっている。ただ、艦娘としての相性は悪くなかった。
恐らくそれは、艦時代の両者の早すぎる離脱から起きる、自嘲の色濃い同属意識だろうと如月は思えど、それを口にするつもりは彼女には無い。そんな物に汚されるほど、二人の間にある今の絆を軽く見られなかったからだ。
「……私達が助けた相手……艦娘達が誰か、聞いた?」
「いんや?」
首を振る深雪に、如月は遠い目で息を吐いた。
彼女としては、中々に口にし難い事であるからだ。だが、それでも彼女は結局口を動かす。そこに、反対方向にすすむ友人が居るからだ。
「私たちと同じ睦月型……それに、私と同じ如月」
如月の呟きに、深雪はただ無言で頷いて促した。
「この世界はぬるいし、弱いのよ。泣いたって仕方ないじゃない。そんな暇があったら殴ればいいのよ。両手がなくなれば、噛み付いてやればいいのに、なんで泣いてるのかしら」
如月の脳裏に浮かぶのは、諦めの相を浮べた自身と同じ如月だ。服装こそ違うが、同じ艦で同じ存在だ。それが如月をイラつかせる。
彼女には、その如月が何を考えていたか分かるから、尚一層くるものがある。
「自分が沈んで司令官が悲しむ事が一番悲しいなんて、そんな事思ってる暇があるなら敵を一隻でも多く潰せばいいんだわ。そうすれば司令官の敵が僅かでも減るのよ? あの人の為の私たちであるなら、あの人の為に最後まで足掻くべきよ。それが、それでこその私達よ」
そこまで言い切って、如月は大きく息を吐いた。黙って聞いていた深雪は、空を見上げて零す。深雪の相貌は、驚くほどに透明だ。
「そりゃあ、今の如月だから出る言葉だろ?」
「……そうよ」
如月は反論しない。その考えにいたったのは、彼女が強くなれたからだ。弱い頃の彼女は、何も取り得が無い頃の彼女は、泣いていたほかの鎮守府の如月と変わりはしない。悲劇のヒロインを演じて、提督に傷を残してしまうだけの存在だった。沈んでいれば、だが。
幸いにして、如月は沈まなかった。それなりの活躍
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