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のではなく、艶やかな仕草がまだまだ人に違和感を与える年頃である。
しかし、だからこそ彼女はその仕草を好んでいるのだろう。それを馴染ませる為の練習期間が今である、と彼女は考えているからだ。
誰しも、最初から熟練者であった訳ではない。皆それを習熟する為の苦しい時間が在った筈なのだ。彼女の師はそう言った。そしてそれを、なるほど道理だ、と彼女も受け入れていた。
「ほんと、ひまねぇ」
ゆえに、彼女は違和感を他者に与えようと止めない。
彼女が選んで、決めた事なのだから。
「おーい、如月ー」
「あら、深雪。どうしたの?」
彼女の――如月の名前を呼びながらよって来るセーラー服姿の少女、深雪を見て如月は小悪魔っぽく首を傾げた。これも、まだ如月にとって練習中の技である。
「睦月達に聞いたら、ここに居るって聞いたからさ」
「睦月ちゃん、何か言っていたかしら?」
「んー……別に?」
「そう」
からっと返す深雪に、如月は素っ気無く返す。そんな如月の隣へ、深雪が挨拶もなく腰を下ろした。
「ちょっと、マナー違反よ?」
「気にすんなって。深雪と如月の仲だろー?」
「なぁに? 如月達ってそんな深い仲だったかしら?」
「あぁーもう、ほら、そこの自販機で買ったコーヒーやるから、機嫌直せよー」
深雪がポケットから取り出した缶コーヒーを少々乱暴に取って、如月はプルトップに指をかけた。
「私、コーヒーより紅茶の方が好きって何度も言ったでしょ?」
「わりぃー、紅茶はなかった」
「本当だか」
深雪の言葉にそう返して、如月はプルトップを空けた。そのまま、缶コーヒーを口に近づけて飲み始める。隣の深雪も、如月に倣ってか缶コーヒーを飲み始めた。ただし、控えめに飲む如月に反して、深雪のそれは豪快だ。現場の作業員並の豪快さだ。
「っかー! いやぁ美味いなー」
「……深雪、あなたも」
「あーあー、分かってるって。女の子なんだから、だろう? 深雪様もそりゃあ分かっちゃいるけどさぁ、なんかこう、違うんだよなぁ」
苦笑を浮べて頭をかく深雪に、如月は小さく息を吐いた。諦めの色を多く宿した相で彼女は呟く。
「もう、折角こうした綺麗な体で生まれたんだから、それを磨きなさいよ」
「えー……そりゃあ、人間の体ってのも悪くないけどさぁ。ご飯とか凄い美味いし」
「というか、深雪はそれが大半の理由でしょ?」
「おう!」
胸を張って答える深雪に、如月は目を閉じて首を横に振った。
深雪という少女は、自身の姿に無頓着だ。如月から見ても、磨けば光るだけの素養があるというのに、深雪はそれを放置したままである。自身を磨く事に労力を惜しまず、淑女として艦娘として僅かでも光ろうと、とある艦娘に弟子入りま
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