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「黒潮ー、そっちの玉子とってー」
「んー……はいな」
「サーンキュ」
妹から差し出された玉子を受け取って、陽炎はにこりと笑った。手に在る玉子を片手で器用に割り、ボウルへ落とすとそれをかき回し始めた。手早く手を動かす姿には躊躇がなく、慣れがはっきりと見て取れた。
「んー……で、塩はこれくらいで」
塩を小さじ一杯ほど入れて、陽炎はまた箸を回し始める。それを見ていた隣の少女、陽炎の妹である磯風が声をかけた。
「司令はだし巻きに塩だったか?」
「うん? そうよ。司令はこっちの方が好みだって。ねぇ、初風?」
磯風の隣に立ち、しっかりと見張る初風に陽炎は声をかけた。問われた初風は磯風の手元から目を離さず、応じた。
「えぇ、前に食べた時も美味しいって言ってたわ」
「ほらほら、さっすが私よねー」
「流石だよな俺ら」
答える初風と胸を張る陽炎とは少し離れたところで、何故か雪風が椅子に座りながらノートPCを開いており、その隣では秋雲がテーブルに片手をついて、フーンとした顔で何かを言っていた。
と、その二人の頭を叩いた者が居た。
「遊んでいる場合ですか、今私たちが従事している作戦の重要さを理解しなさい」
ぎろり、と眼光鋭く妹二人をにらむのは不知火である。不知火は二人を叩いた後直ぐに自身の従事している作戦へと戻っていた。つまり、から揚げをあげていた。
菜箸で衣に包まれた鶏肉をつつく不知火の相は、ただただ真剣その物であった。
「はいはい、秋雲作戦行動に戻りまーす」
「雪風も戻ります!」
そう言って、秋雲と雪風の二人は自身達に与えられた作戦内容、味噌汁作りに戻った。そしてそんな二人を見てから、磯風が声を上げた。
「そうか、司令は塩が好きなのか……よし、こっちの秋刀魚も塩をもっと振れば」
「馬鹿、振り過ぎよ! 提督が高血圧になるでしょ!」
「浜風ー、浦風ー、手が空いてたら磯風を確り見たげてかー」
「分かりました」
「まかしときー」
秋刀魚の塩焼きを任されている磯風に、浜風と浦風が黒潮の言葉に頷いて返した。初風一人では荷が勝ちすぎだと彼女達も判断したからだろう。
「というか、何故初風はいつも私の料理に駄目だしするんだ?」
「……良いでしょ、別に。いいから塩から手を放しなさい、はーなーしーなーさーい!」
磯風の疑問に答えぬ初風の姿を見ながら、陽炎は肩をすくめた。今日も大仕事だ、と考えながら彼女は今自身達――陽炎姉妹達が集まる調理場を見た。
場所は、間宮食堂の厨房である。姉妹の少ない艦娘達なら、鎮守府司令棟にある給湯室でも十分調理できるのだが、流石に陽炎姉妹程数が多い艦娘達になると、広さが必要になる。
姉妹の多い艦娘達が、さてどうした
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