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ない類の物である。
ゆえに、今谷風をさす姉妹達の視線は少々鋭い。
「なんだいなんだい、皆してさぁ。谷風さんだって乙女だってんだよ? 想う人と一緒にご飯も食べたいもんさ。皆だってそうだろう?」
自身の心情をあっさりと喋る谷風に、皆は俯き、目を閉じ、或いはそっぽ向いた。各々バラバラの行動であるが、共通点は一つだ。頬が朱に染まっていた。
「そりゃ……まぁ……自分が作った物とか、美味しいって言って食べてる姿とか見れたら、いいと思うけど……」
陽炎の言葉は、姉妹達を代表した言葉でもあった。その為に皆朝の早くから準備し、皆気持ちを込めて料理を作っている。全ては提督、司令と呼ばれる男の為だ。
そこには日ごろの感謝と、無垢な想いと、純粋な愛があった。
「でも……まずは料理をもっと上手にならないとね」
「ですよね……戦うのはともかく、料理というのは……少し難しいです」
「とかいって、浜風なんてバレンタインデーとか凄い気合入ってたのにねぇー」
「そうじゃのー」
とりとめもない会話で、彼女達は黒潮達が帰ってくるのを待っていた。弁当箱と魔法瓶を流しで洗わなければならないからだ。
黒潮と磯風に任せればいい、という事でもあるがそれをしないのが陽炎達だ。いや、多くの姉妹達も同じだろう。
そうやって会話を交わしていると、磯風と黒潮が戻ってきた。
手に在るのは空の弁当箱と、魔法瓶だ。二人に声をかけ様として、陽炎は眉を顰めた。
磯風は常より仏頂面で、黒潮は満面の笑みだ。さて、何があったと陽炎が問う前に、初風が磯風に声をかけた。
「どうしたの……? 二人ともそれぞれ顔色が違うけれど?」
「司令だ」
短く答えて、磯風は手に在る弁当箱を流しに置いた。が、磯風の返事は返事になっていない。彼女自身もそれを理解しているのだろう。磯風は弁当箱を包んでいる布を少々乱暴に解きながら続けた。
「三人で朝食をとっていると、司令が黒潮にプロポーズした」
「黒潮、詳しくお願いします」
「ぐは……っ!」
磯風の言葉が終えるより先に、不知火が黒潮の襟首を締め上げていた。苦しさに顔を歪める黒潮を見下ろす不知火の顔は、姫級を殴る前の霧島と同じ物であった。完全に敵を見る相である。
「いや……ちょ、息が……!」
「不知火、放さないと喋れないと谷風さんぁ思うんだけどねぃ?」
「……そうですね」
谷風の言葉に頷き、不知火は黒潮を放した。解放された黒潮は数度咳き込み、息を整えてから口を開いた。その相はやはり、上機嫌である。先ほどの事があったのに、だ。
「い、いやぁ、なんか一緒にご飯食べてたらな? 司令はんが、黒潮と一緒に朝御飯を食べたい人生だった……とか言い出して、な?」
「それだけじゃな
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