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だ自身と提督だけが分かっていればいいとしか考えていない。それは、わがままでもあり、一途でもあった。
陽炎はその姉妹の多さから、姉という立場上そういった物を否定しない。しないからこそ、再び彼女は問う。
「今日はお姉ちゃんが出汁巻き当番でしょう、瑞風? じゃあ、瑞風はどうしたらいいと思う?」
「じゃ、じゃあせめてムサッカアを」
「今更作る時間ないでしょう? っていうか、なんで中東料理なの?」
「いや、ムサッカアってなんやねんな?」
陽炎は当然の様に返したが、普通は黒潮の様に知らない料理である。ムサッカアとは中東、レバノンの料理で、野菜を使ったグラタンの様な物である。多分瑞風なる駆逐艦は、艦時代その辺りでの任務が多かった為にそういった料理を得意としているのだろう。
「ほら、しょうがないから一緒に作るわよ」
「か、陽炎お姉ちゃん……!」
泣いた顔に笑みを浮かべ、瑞風は姉である陽炎に抱きついた。抱きつかれた陽炎は、優しい顔で妹の背を何度も叩いた。
「ふむ……ところで陽炎」
「なによ、磯風」
「うちに瑞風という妹はいないぞ?」
「……」
「……」
磯風の言葉に、抱き合っていた二人は互いに目を合わせた。
「あんた何自然にうちの妹になってるのよ!?」
「くっ……あともう少しで切り抜けられたのに……磯風、流石武勲艦ね!」
「なんだろうな、それは誉められているのか?」
各々が口を開く調理場で、秋雲がテーブルに片手をつき、雪風がノートパソコンを開いて椅子に座っていた。
「流石だよな、うちの姉者」
「OK、ブラクラゲット」
個性的な姉妹達である。
「んー……終わった終わった」
「こっちも終わったわよ」
「こっちもオッケイだぜーい」
陽炎はどうにか追い出した瑞風なる妹分の事を脳裏に隅に追いやりながら背を伸ばした。
先ほどまで広げられていた調理器具は元に戻され、汚れたところなども確りと綺麗に拭われていた。少なくとも、陽炎達が来る以前の調理場には戻っていた。
「うん、そっちもお疲れ」
「いえ、これくらいは」
「そうじゃよー」
自身の言葉に返事を返す妹達に、陽炎は微笑んだ。そのまま、浜風と浦風に目を向けて口を開いた。
「で――大丈夫だった?」
「……どうでしょうか。見た限りでは十分に封じ込めたと思うのですが」
「磯風の料理は、時間が経つと進化する事も在るけん、なんとも言えんよ……」
探る陽炎に、浜風は困り顔で、浦風は溜息混じりで返した。浦風は進化、と口にしたがそれを笑う者はここには居なかった。普段茶化す事が多い秋雲も、黙って聞いているだけだ。
陽炎は一番近くで磯風を見ていたであ
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