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物か、と頭を悩ませていたところ間宮の好意で厨房の貸し出しが決まったのだ。
今朝の提督の弁当番は陽炎達であり、不知火曰くの遂行している重要な任務とは、それを美味しく作り上げる事である。
「よし、あとはこれを焼いて……」
と陽炎が玉子焼き用のフライパンを探していると、彼女の鼻をふんわりとした甘い匂いがくすぐった。陽炎は、はっとした顔でにおいの先、コンロへ目を向けた。
そこにはエプロン姿の少女が一人、玉子焼きを作っていた。
「まーたーかー!」
陽炎は音もなくその少女の背後に立つと、肩をがっしりと掴んだ。掴まれた方は身じろぎしながら、それでも一切のミスなく玉子焼きを作りながら声を上げた。
「放して! 放して! 私は陽炎型20番艦、瑞風! やっと会えた、ご指導ご鞭撻よろしゅうな!」
「私にそんな妹いないわよ! もう毎回毎回玉子焼き作って! 知らぬ間に弁当に入れようとして! というかその雑な挨拶はなに!?」
陽炎に肩を抑えられて身じろぎする自称瑞風は、どこで調達したのか陽炎姉妹達と同じ制服姿である。違和感がないどころか、これが彼女の正式衣装ではないのか、と思えるほどの着こなしだ。
「司令の出汁巻きは私が作るから、あんたは出なさい。っていうか、軽空母の当番は夜でしょ! ちゃんと守りなさい!」
「大丈夫、陽炎が出汁巻き作る、私玉子焼き作る。問題ないじゃない?」
「なぁに、演習で夜戦やりたいって?」
「やめて! やめて! 夜戦とか私達置物だから、置物だからやーめーてー!」
マジ泣きし始めた瑞鳳に、陽炎は額を押さえて溜息を零した。陽炎の前で泣きつつもしっかりと玉子焼きを作るこの自称駆逐艦陽炎型20番艦瑞風、他称玉子焼き型軽空母1番艦瑞鳳は、何故か他の姉妹達の弁当当番でも、どこからか入ってきて玉子焼きを作ってしまう変な癖を持っていた。
こうして陽炎姉妹、いや、他の姉妹達の調理に混じって玉子焼きを作った回数は、優に両手を超える。両手どころか、陽炎が知る限り皆勤賞であるから相当な数の筈だ。
陽炎は本気で泣いている瑞鳳の姿に、心を鬼にして眉に力を込めてにらみ続けた。
――もう、瑞風ったら、ちゃんと理由さえ教えてくれたらお姉ちゃんだって邪険に扱わないのに。末っ子だからって甘やかした私も悪いのかしら。
と、陽炎姉妹の制服をがっつり着こなした軽空母に確り侵食されつつ、陽炎は瑞鳳に問うた。
「で、瑞風。あんたどうしてこんな事ばっかりするの?」
「だって、提督の玉子焼きは私の当番だから……」
陽炎に応じる瑞かz瑞鳳の相は、泣いてこそいるが真剣その物だ。何を馬鹿げた事を、と思うのが普通だろうが、その馬鹿げた事に真剣であるのが瑞鳳だ。
彼女はそこに他者の理解を求めていない。た
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