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の日だろう?」
「なんやねん、その駆逐艦の日って」
「天津風から聞いた。一部軽空母と装甲空母は、艤装の取替えによって駆逐艦になれると。流石だな龍驤」
「なれへんわ!」
ぴし、と手の甲で何も無い場所を叩く龍驤を長門は暫し眺めて――そして驚いた。
「なに、嘘か!?」
「いや、いやいや分かってたやん? 絶対分かってたやん?」
「しかし、翔鶴も艤装の交換で艦種が変わるぞ?」
「いや、それ同じ空母やん。どうやったら空母が駆逐艦になれるんや」
ふむ、と考え込み始めた長門に、大和は小さく溜息を零した。長門という艦娘は、少しばかり天然というか、純粋だ。作戦行動、戦力考察等に関わらない話の場合、こうして簡単に騙される。そんなところもまた皆に愛されているのだから、悪い事ではない。
完璧な存在が周囲に居れば、排除したがるものだ。満ち足りている存在に劣等感を植え付けられ、肥大化するそれを抑えられず、存在そのものが疎ましくなるのである。人も艦娘も、心がある以上良い事ばかりではない。
時に、そんな物にも目を向ける羽目になるのが生の路だ。
完璧ではない、という事は長門とこの鎮守府にとって歓迎すべき事ではあるのだが、しかし妹分の大和としては、日常のそういった面をどうにか、と思ってしまうものである。
そんな思い悩む大和を放って、長門と龍驤はまだ言葉を交わしていた。
「そうか……しかし演習か。よし、今度山城と神通も呼んで盛大にやるか?」
「いや、長門それはあかん。あかんやつや」
艦時代、龍驤と長門が演習で交戦したように、山城と神通も交戦している。そしてその場で神通はやらかしたのだ。山城からしたらトラウマ確定の行為を。
「にしたかて、長門。天津風なんか他に言うてへんかった?」
「……そうだな。他にも確か、手ぬるい、もっと頑張りなさい、と」
「いや、何をや」
「……会話の流れで言うなら、お前の駆逐艦としての能力だろうな」
「なんでやねん」
「そうでち。龍驤は軽空母だから駆逐艦じゃないでち」
「なぁ、せやん――」
長門と龍驤は同時に、鋭く背後に振り返った。あまりの鋭さに大和がワンテンポ遅れたほどである。だが、彼女達の視界には常のグラウンドがあるだけだ。他には何も無い。
そう、何も無い。
「……今日も駄目か」
「うちの索敵から逃げ切る、やと……やるやんか……」
長門と龍驤は瞳に鋭利な輝きを映して呟いた。大和は、あれが、と呟くだけだ。
彼女達が前に――駆逐艦たちの視線を戻すと、先ほどまで同様の訓練姿があった。何一つ変わっては居ない。
勝手に走り回る雪風と谷風に、切れた霞と満潮が妙高直伝腕挫十字固をきっちりかけている、いつもの光景だ。そしてそんな霞と満潮に、ハラショーと拍手
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