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執務室の新人提督
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子をみなかった!?」

 彼女は肩で息をしながら、店内を見回し大きな声で叫んだ。提督達は互いの顔を見てから、代表して提督が問う事にした。
 
「レーべさん? マックスさん? それともプリンさん?」
「違うわよ! うちの子って言えば、オスカーに決まっているでしょう! もう三時間も見つからなくて……」
「――あぁ、あの黒い猫ですね」

 オスカーと言われても提督にはさっぱりであったが、続いて口にした鳳翔のその言葉に、眉を動かした。
 
「オスカー、と来たか……君、その猫を出撃につれていっちゃあいけないよ? いいね、絶対だよ?」
「……? 当たり前じゃない、そんな危ない事しないわよ。もう、あの子ったら、お風呂が嫌いだからって何も逃げなくてもいいじゃない……」

 気の強そうな顔から一転、おろおろとし始めた姿に提督は腰を上げた。提督に合わせて吹雪も腰をあげる。鳳翔も、といったところで提督がそれを手で制した。
 
「鳳翔さんはお店があるでしょう?」
「そうですよ、私達に任せてください」
「いえ、まだ開店には時間がありますから、せめてそれまでは」
「鳳翔……吹雪……提督……あ、ありがとう」

 手伝うと言外で語る三人に、ビス、グワットは常らしからぬ素直な調子で感謝の言葉を口にした。
 
 座敷から出ようとする提督は、靴を履こうとして動きを止めた。彼の靴の隣にある吹雪の独特なデザインの靴の後ろに、小さな影があった。黒いころころとしたそれは……
 
「あぁ、オスカー! そんなところにいたのね!」

 ビ、グワットは小さくころころとした黒猫――オスカーを抱き上げた。逃げないところを見ると疲れているのか、動き回って風呂の事も忘れたか、それだけ懐いているかのどれかだろう。
 嬉しそうに無邪気に笑うでっかいレディーを見ながら、しかし三人は黙ってオスカーを見つめていた。いや、より詳しく言うのなら、オスカーの頭頂部にあるそれを、だろうか。
 三人の視線に気付いたのか、大きな暁は胸を張って言った。
 
「どう、似合っているでしょう? 流石私のオスカーよね!」

 豊満な胸の中で眠そうに欠伸をするオスカーの頭頂部には、提督が偶に被る帽子とまったく同じ物が猫サイズになって被されていた。
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