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執務室の新人提督
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酒屋である。時間は陽が少し前に落ちた頃で、まだ開店前だ。
 提督のあまりにあまりな発言に、吹雪が鳳翔の元に提督を運んだ結果、こうなったのである。
 
「でも……鳳翔さんは凄いですね。第一艦隊の不動の軽空母なのに、週4日もお店を開くなんて……」
 心底からの言葉であろう。吹雪の相は素直な賞賛に染まり、吹雪の声は純粋な感嘆に溢れていた。
 
「何も凄いことじゃありませんよ」

 鳳翔は微笑むだけだ。ただ、と鳳翔は続けた。
 
「私が、皆の笑顔をみたくて、出来ることをやっただけですから」

 そう言った。吹雪と提督は、そんな鳳翔の笑顔に胸を打たれた。終戦後、一番最初の空母は、一番最後の空母と共に解体された。その小さな、艦として見れば小さな体の上に傷つき倒れ、心さえ切り裂かれた様々な人間を乗せて、同胞達の消えた水底の上を駆け回った。
 鳳翔が最後に見た物はなんであったのか、感じた事はどんな事であったのか、そんな事を分かると言えるほど、共感できると思えるほど吹雪も提督も傲慢ではなかった。
 
「それに、普段は間宮さんや瑞穂さん達にも助けて貰っていますから」

 第一艦隊不動の両目の一人である鳳翔である。そう大きくはない店一つとはいえ、一人で回すのは不可能だ。そのため、鳳翔の友人である間宮や腕自慢の艦娘が下拵えなどを手伝うのである。
 鳳翔自身も、体が空いている時には様々な所で動いている為、皆出来ることを手伝うのだろう。

「それに……」

 と、また鳳翔はそれにと呟いた。ただし、今回の呟きは弱弱しい上に少しばかり困り顔だ。さて、何事かと身構える吹雪と、秋刀魚うめぇ、と刺身を食べる提督は鳳翔の次の言葉を待った。
 
「その……私達軽空母は、お酒好きが多いですから、放っておくと間宮さんに迷惑をかけてしまいそうで……」
「あー……」
「千歳さんと隼鷹さんですね……」

 納得、と声を上げる吹雪と該当艦娘の名をあげる提督に、鳳翔は溜息を零しながらも確りと頷いた。
 
「その二人に引っ張られて、皆飲んでしまうんです……それを見ているともう、これは私が処理できる範囲で見ていないと、他の皆に迷惑をかけると思ってしまいまして……」

 龍驤と共に軽空母をまとめる――いや、この鎮守府を裏からまとめる鳳翔である。当人にその気はなくとも、実際そうなっているのだから仕方ない事であった。
 そんな彼女であるから、後輩達を放っておけなかったのだろう。であれば、と色々考えてこの居酒屋を持つに至ったのだ。
 
「皆の笑顔も見れますし、軽空母達のお酒も度を越せば注意できますし、丁度良かったんですけれどね」

 笑顔の鳳翔であるが、度を越した場合どんな風に注意されるのか気になって仕方ない吹雪と、秋刀魚うめぇ、と刺身のつまの千切り大
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