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手を置き見つめ合ったまま優しく声をかける。吹雪にとっては、漫画やテレビでしか見た事がない世界が、今目の前で、しかも自身に起きていた。
頬は熱くなり、心臓の鼓動は煩いほどに早く鳴り響いていた。自身の体であるのに、心であるのに、吹雪には何一つ制御できない。
言い知れぬ甘い痺れの中で提督の次の言葉を――或いは行動を待つ吹雪は、
「猫提督、居ないって」
「……はい?」
素に戻って首をかしげた。
「可笑しいじゃないか、だってここにはショタ提督が居るんだよ?」
「は、はぁ?」
「だったら犬提督だって猫提督だって凶暴な自称兎型パワードスーツを着た提督だって居て良いじゃないか」
「は、はぁ」
吹雪は常の調子に戻った提督の意味不明な言葉に、ただ頷いていた。彼女の手にはオレンジジュースで満たされたコップがあるが、それに口をつける余裕もない。
「でも……提督?」
そう言って、吹雪と提督の座る座敷席に入ってきたのは鳳翔だ。彼女は手に在る盆から秋刀魚の刺身を提督の前に並べ始めた。
「その、猫、ですか? そういった同僚がいたとして、提督はどうされるのでしょう?」
「もふりますがなにか」
鳳翔の疑問に、提督はなんの迷いもなく即答した。しかも無駄に男らしい顔で。普段そんな顔を見せられれば惚れ直す鳳翔と吹雪であるが、流石に話の内容が内容だけに苦笑いしか出てこない。
「大淀さんにも調べて貰ったんだけど、居ないって言うし……残念だ……本当に残念だよ……」
違う鎮守府では、将来を考えて違う大淀が提督個人のデータを調べていたというのに、この鎮守府では、将来もふりたいが為に大淀に頼んでそんな事をやっていた訳である。頼む方も頼む方だが、それをしっかり調べる方も調べる方である。おまけにそんな事を書類数枚で提出だ。この鎮守府は本当に色々と間違っている。
「流石に私たちでも、猫や犬が提督では困りますねぇ……」
頬に手をあてて上品に微笑む鳳翔の顔を見ながら、提督は何か言おうとしてやめた。吹雪は吹雪で、腕を組んで、むむむ、と唸っていた。が、暫ししてから腕を解いて声を上げた。
「動物の提督は無理ですよ……意志の疎通が出来ないじゃないですか」
「喋るから大丈夫だよ」
「それもう犬とか猫じゃないですよね?」
吹雪の鋭いツッコミにも提督は怯まない。彼は鳳翔によって捌かれ、今目の前に置かれている秋刀魚の刺身を見て鳳翔に頭を下げた。
「すいませんね、鳳翔さん。お邪魔した上に料理まで出してもらって」
「いいえ、お気になさらないで下さい。今日は私も龍驤も待機でしたし、仕込みも一段落ついたところでしたから」
現在、三人が腰を下ろしているのは鳳翔の居
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