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る物は同じだ、と大井は感じたのだ。
ただ、素直に頷くには大井の被った猫が大きすぎた。
「比叡さんだって、提督の事嫌いじゃないでしょう……? それに、金剛さんに悪いと思わないですか?」
「うー……ん。私の事は別にいいかなぁ。金剛お姉様の事は、私はどっちも応援するから問題ないでしょ?」
「ないんですか?」
「うん、ないない。金剛お姉様も、榛名も、霧島も、大井さんも、私は応援するの」
何を応援するのか、という主語は抜けているが大井からすれば問いただす必要も無い事であった。応援というそれに、いい迷惑だ、と返すのは簡単だった。特に大井の様な気の強い娘には。
ただ、それを言わせない強さが比叡の輪郭の中にあった。
「みんながみんな、幸せになろうとしても無理でしょう? だからせめて、自分の友達と姉妹くらい、応援したいな、って」
偽善と笑い返せば、きっと比叡はそれを黙って受け入れただろう。しかし、大井には出来なかった。比叡という分かりやすい艦娘の心が、大井には確りと見えてしまうからだ。
愛されようと咲き誇る華があるなら、ひっそりと咲く華もあるだろう。咲き誇る華の彩を、より美しく見せる為に咲く地味な華だ。
比叡は、金剛達にとってのそれで良いと語っている。
大井はなるほどと頷いた。彼女の脳裏にあるのは、那珂の顔だ。
大輪と咲いて、誰も彼も咲き誇れと誘うのが那珂なら、ただ寄り添うようにそっと咲くのが比叡である。咲き誇る華も違えば、在り方も違うが想いは一緒だ。
誰かの為の自分。それだけだ。
「比叡さんこそ、提督の隣に座ればよかったんじゃないですか?」
「え、私……? 私は……」
圧されてばかりでは癪だ、と大井は比叡に口を向けた。比叡は少し困った顔をして、それから穏やかに笑った。
「一番大事な人達が寄り添いあって笑ってくれたら、それが一番の幸せだから」
欲張りな艦娘なのだろう、比叡という存在は。きっと、彼女の中には一番大事な人が沢山居て、誰も選べないのだ。だから、こうも比叡は自身を置いてしまう。置いていかれても、放り出されても、きっと比叡は少し泣いてまた歩き出すだけなのだろう。
誰かの為の自分だから、と。
それが、大井には気に食わない。自身も夜だけ咲く華であるくせに、気に食わなかったのだ。
大井は、眦を決して比叡に人差し指を突きつけた。
「私も、比叡さんは応援するから、覚悟しなさいよね!」
まるで喧嘩を吹っかけるような、そんな剣幕であった。
大井と比叡が友達になった、そんな日の事である。
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