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執務室の新人提督
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う見た。
 それでも、大井は何も口にせず黙って靴を脱ぎ、比叡の隣に腰を下ろした。提督に向かって頭を下げる大井に、隣の比叡からの視線が突き刺さった。大井は比叡に目を合わせた。

 ――そこでいいの?

 そう語る静かな、本当に静かな瞳に圧されて大井は僅かに肩を揺らした。だがそれだけだ。彼女は比叡から目をそらしてそっぽ向いた。
 子供の様な姿だが、今の大井にはそれに気付くだけの余裕はなかった。なにせ普段昼間には会わない提督が彼女の前に居るのだ。しかも甘味処という、仕事も関係ない場所でだ。それだけでも彼女は冷静にある事が出来なかった。
 しかし、今の彼女の相方、比叡は落ち着いた物であった。
 
「それでは、少しお待ちください」
「はいはい、ゆっくりでいいですよ?」
「そうですよ、私もよくカレー作るから分かりますけれど、大変ですモンね」
「……は、はははは……そ、そうですね。では」

 比叡の言葉に、伊良湖は濁して返し襖を閉めた。小さな足音が提督達のいる個室から離れて行き、やがてそれはまったく聞こえなくなった。
 
「にしても」

 それが合図、という訳ではないだろうが、提督が自身の前に並ぶ二人を見比べながら笑いかけた。
 
「比叡さんがもう一人連れてくる予定と聞いてはいたけど、大井さんってのは意外だなぁ」
「あー……司令も私がお姉様と一緒に来るって思ってたんですね? ショボーン……私って、そんなに友達いなさそうに見えますか……?」
「いや、だって君、まず金剛ありきじゃあないか?」
「まぁそうなんですけれどね」

 二人はまったく調子を乱す事も無く極々自然に会話を続けていた。大井は黙ってそれを聞くだけだ。
 
「榛名か霧島も、とは思ったんですけど、二人とも今日は第一艦隊で出てますしー」
「今日はちょっとね。火力が必要だったから、大淀さんと長門さんに頼んでおいたんだ。申し訳ないね」
「いえいえ、戦うの否定しちゃったら、私達もうなんでここにいるか分かんないものですから」

 にこにこと笑う比叡は、そこまで言うと突如隣の大井の肩に手を置いた。大井の身は僅かに跳ねたが、比叡も提督も気付いた様子は無い。
 
「で、そこで友達の大井さんにご足労願いました」
「……え、友達、ですか?」
「え、私達友達じゃないの?」

 悲しそうな比叡の相に、大井は軽い眩暈を覚えた。大井にとっては、比叡はそれなりに親しい知人ではあるが、友人と断言できる関係ではない。というよりも、大井にはそういった知人は多いが友人となるとまったくいないのだ。
 
「ショボーン……友達じゃないんだ……」
「あぁもう、友達でいいです、いいですから落ち込まないで」
「え、本当? あとで体だけの関係とか言い出さない?」
「言いませんよ、そん
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