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執務室の新人提督
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人をお一人どうぞ、ってお伝えしたから、てっきり金剛さんを連れてこられると思っていたもので」
「あー……」

 伊良湖の言葉に、比叡は納得と声を上げた。これは大井も同意である。
 比叡という艦娘は、大抵とあるスキルと特徴を持って生まれる。とあるスキルは言うまでも無くアレの事であり、特徴というのは自身のネームシップに当たる金剛への熱い愛情である。
 鎮守府によっては金剛をかけた提督対比叡の血で血を洗う抗争まで起きているのが、この艦娘の現状だ。ついでに一つ。多くの金剛ラブ勢の提督対比叡の現状だが、2対8で比叡に押されている。原因は、カレーによる押し出し、払い落とし、足払い、名古屋撃ち、奥義!無双乱舞、途中であのカレーしか食べられなくなって比叡ラブ勢になった、等である。
 
「まー、金剛お姉様を、とは思ってたんですけれどねー……なんか金剛お姉様、抱き枕用の? 提督の隠し撮り分がないとかで、今動けないとか言ってまして」
「さぁ伊良湖さん、どのテーブルに座ればいいのかしら?」
「あ、はい。こちらです」

 比叡の話す内容が大分怪しかったので、大井が強引にカットした。伊良湖も、ほっとした相でそれに合わせてテーブルへと案内し始める。
 二人が案内されたのは、個室であった。閉ざされた襖を前に、比叡が笑顔で零す。
 
「ほはー……伊良湖さん、何やら凄い個室ですなぁー」
「えぇ、お店の将来のメニューを決める事ですから、格好だけでも、なんて」

 楽しげな比叡につられてか、伊良湖は接客用ではなく伊良湖個人としての笑みを浮かべていた。大井は、こうして自身を自然に引っ張ってこの店に来た事や、伊良湖との話しかた等を見て比叡の社交性の高さに舌を巻いていた。
 
「さぁ、どうぞ」
「あ、どうも」
「ありがとうございます」

 襖を静かに開けた伊良湖に、二人は頭を下げた。座敷に上がるため靴を脱ごうとした二人は、しかし座敷のテーブルを見て目を見開いた。
 
「あ、やっと入ってきたねぇー」
「し、司令?」

 そこには提督が一人で座っていた。いつも通りのなんら変わらぬ提督である。手で二人を招く提督の姿にはどこか愛嬌があり、大井などはそれだけで頬が緩んだ。
 が、小さく首を振って大井は頬を引き締めた。そんな大井にも気付かぬようで、比叡は素早く靴を脱いで提督の前に腰を下ろした。
 
「司令もお呼ばれですか?」
「うん、何か大事な事だからって。まぁ、僕としては伊良湖さんの新作食べられるなら、それだけでいいんだけれどね」
「その、やっぱり新作の試作ですから、この鎮守府のトップに食べて貰いたいじゃないですか?」

そう語る伊良湖の目は、大井から見ても深い色を湛えていた。単純な物ではない。複雑にして深い感情がそこにあった。少なくとも大井はそ
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