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執務室の新人提督
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 純粋な軍の大型艦造船所生まれは扶桑だけである。あの大きさ的に、選択肢が絞られただけかも知れないが。
 
「はるなねーさーん」
「やーん、伊勢かわいい伊勢可愛いー! 伊勢はなしてこんなぬなまらかわいいがねー!」
「あぁ……貴方やっぱり金剛の妹ねぇ……」
「カワサキか……」

 再びハグを始めた伊勢姉妹長女と金剛姉妹三女を前にしても、扶桑と日向は落ち着いたものであった。彼女達が属する鎮守府ではこのくらい日常風景だ。川内が夜戦を捨てるとか、神通が姫級相手に情けをかけるとか、那珂ちゃんのアイドル引退宣言とか、山城が妊娠したとか朝潮が妊娠したとかない限り、この鎮守府の面子が本当の意味で混乱することはないだろう。
 まぁ提督が箪笥の角で足の小指ぶつけて悶絶したくらいで皆混乱する程度でもあるのだが。
 
「しかし……提督は今後どうするつもりだろうな」
「どう、とは?」

 だだ甘えさせてくれる榛名姉様の腕から再び離れ、伊勢は日向に問うた。榛名にしても、扶桑にしても目で日向に問うている。そのくらい、日向の声音と表情が真剣な色を帯びていたからだ。
 
「山城が第一旗艦で、今も二人っきりであるなら、もう山城もすべき事はしているという事だ」
「……」

 日向の言葉に、皆押し黙った。提督は夫であり、山城は妻である。であれば男女の愛の落ち着くべき所に落ち着いている筈だ、と日向は言うのである。榛名も伊勢も真面目な顔でそれに頷くが、一人扶桑だけは思案顔であった。
 
「であれば、提督も男だ。しかもただの男ではない。私達を率いる男の中の男、英雄だ。女は一人であってはいけないだろう」
「あぁ、英雄色を好む、ね?」

 姉の言葉に日向は頷いた。あばたもえくぼ、とでも言うのか。恋する乙女は盲目と言うべきか。彼女達の目にはあんな提督でも英雄に見えてしまっているらしい。
 いや、実際それに相応しい戦果を提督は持っている。ただの一人も失わず、様々な激戦を制してきたのは間違いなく提督だ。
 ただし、それはゲーム時代である。あの頃のように攻略ウィキにも頼れず、ボタン一つで命令を出せる訳ではない。今の提督はただの人間だ。彼女達を愛するただの人間で、ただ彼女達が愛する人間だ。
 
「第二旗艦……つまり、その、伽に呼ばれる……可能性もある、と?」
「提督の事だ、すぐという話にはならないだろうが、いずれそうなるだろう」

 顔を真っ赤に染めて、それでも真剣な相で呟く榛名に日向は頷いた。伊勢もまた頬を染めてこそいるが真剣な相である。そして扶桑だけはやはり思案顔だ。
 
「……どうしたんですか、扶桑さん?」
「あぁ……いえ、山城の事なのだけれど……」

 扶桑の相に気付いた榛名に、扶桑は口を小さく動かして遠慮がちに囁いた。そうなると、自然皆が扶
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