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「まーみーやー……おかわりデース」
「はいはい、少しお待ちくださいね」
間宮食堂のカウンター席でだらしなく両肘をついて息を吐くのは、金剛型姉妹の長女、金剛である。対照的に、背を伸ばして隣に座しているのは彼女の妹、金剛姉妹の末っ子霧島だ。霧島は複雑な相で湯のみを両手で包むように持ち、ゆっくりと嚥下した。
いつもなら、彼女達はカウンター席ではなくテーブル席に座って食事を摂る。間宮食堂のテーブル席は、姉妹の多い駆逐艦娘にも合わせた大型の物だ。そこにたった四人で座るのか、と思われるかもしれないが、霧島の姉である金剛と言う艦娘は、そこに居るだけで人を惹き付けるところがある。
任務行動の都合一人、或いは少数になった艦娘達や、何事かの相談を持ちかける艦娘などがテーブルに寄ってくると、大型のテーブルで丁度良いくらいなのである。
が、今回彼女達はカウンター席を選択した。霧島の優秀な頭脳が、今夜はそこで摂るべきだと訴えたからである。
その証拠に、常ならば寄ってくる艦娘達もまったく来ない。カウンター向こうの調理場で金剛に頼まれた物を用意している間宮も、完全に苦笑いである。
さて、いったいぜんたい何がそうさせているのかと言えば。
「ブー……ブー……提督ー……提督ー……」
金剛がこの調子だからである。この金剛、鎮守府に所属する艦娘達のトップ2という立場にある。錬度と戦果も十分に誇れる金剛だが、彼女が長門に次ぐ立場に在るのはそれだけではない。
長門とは違った懐の深さと面倒見の良さ、そして接しやすい彼女の在り方が自然と金剛をそういった立場へと押し上げたのである。
金剛自身、そういった自身に不満もないようで、むしろ率先して皆の面倒を見ていた。
自身の心を殺してまで皆の意見を汲み取る長門、親しみやすさを持つ金剛、参謀役の大淀、艦娘と提督の橋渡し役初霜、白装束と血糊が似合う山城。この艦娘達が提督の鎮守府におけるトップ4、いわゆる四天王である。
「はい、どうぞ……その、飲み過ぎは毒……かしら? いえ、きっと毒ですよ?」
「わかってマース……分かってても女にはストップできない時があるんデース……」
そういった立場の艦娘が、顔を真っ赤にして管を巻いているのだ。何事かと遠巻きに見ることはあっても、近寄ってくる者は少ないだろう。
間宮から受け取ったそれを、金剛は大きく呷った。ビールジョッキで一気飲みでもしているような姿だが、金剛の手に在るのは小さなティーカップである。
当然、中を満たしていたのも、今金剛の胃に流し込まれているのもただの紅茶だ。決してアルコールは含まれて居ない。居ないはずなのだが。
「ぷっはー! 仕事あがりの一杯は格別ネー!」
背を伸ばしたままながらも、疲れきった顔の霧島の隣で仕事帰り
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