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そう言うと、天龍は勢い良く秋刀魚定食を食べ始めた。隣に居た木曾も、少し送れてそれに倣う。霧島と金剛は、きょとん、とした相でそれを眺めていたが、カウンター向こうの間宮は笑顔だ。天龍と木曾が何をするのか、理解しているからだろう。
暫しの時間で、二人は食事を終えた。
「ご馳走様、間宮さん。……ごめんな、食べ物こんな風に食べちまって」
「いいえ、天龍さんと木曾さんにその思いがあるなら、私からいう事は何も在りませんよ」
天龍の横で済まなそうな顔を見せる木曾に笑いかけ、間宮はそう言った。二人は頭を下げてからカウンター席を離れた。
「よし、行こうか」
「おう、ほらほら、準備しろよ二人とも」
「え? え?」
「な、なんですか?」
天龍が金剛の肩をたたき、木曾が霧島の背を叩く。何がどうなっているのか分からない二人に、天龍はにやりと笑った。
「大人ってのはな、弱音を吐いていい場所は限られてんだぜ? なら金剛よぅ。そっちに行くのがまず最初だぜ」
「そうだぞ。俺たちでよければとことんまで付き合うさ。仲間なんだ、お前の荷物半分くらいなら、俺たちだって持ってやれるさ」
「木曾……天龍……おまんら……」
「私完全に巻き込まれなんですが」
天龍と木曾の言葉に目を潤ませてどこかの方言を使い出した金剛と、朝帰りコース確定かと額に手を当てる霧島の姿は対照的だ。木曾はそれを笑う。が、それは純粋な笑みだ。
「そんな事を言っても、霧島は付き合うんだろう?」
「当然です。私は金剛姉様の妹ですから」
胸を張ってそう語る金剛姉妹の四女に、また木曾は笑みを深めた。天龍が金剛の背を押し、木曾が霧島の背を叩き、四人が間宮食堂から去っていく。
消えた四人の背を思い浮かべながら、間宮はメニュー表を眺めた。
――紅茶、やめようかなぁ。
と考えながら。
ちなみに。
鳳翔の居酒屋で酒を飲んだ金剛は即素面に戻った。
「鳳翔さぁのところのお酒は紅茶のごたる!」
素面である。きっと素面である。
あと、
「流石金剛姉様……この霧島の目をもってしても見抜けぬなんて! 霧島一生の不覚!」
と叫んでいた眼鏡っ子が居た事をここに記しておく。
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