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執務室の新人提督
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だ。事実霧島などは耳を塞いでいた。姉と双子の姉の現状に何か思う事があるのだろう。気晴らしに敵を刈ろうとか言いだすような娘でも。
 
「まぁ……なんだ。提督は金剛のやった事をそんなに怒ってないだろ」
「いや、というよりあれはもう完全に流しているだろうな、あいつはそう言う男だ」

 天龍と木曾の二人が湯飲みを片手に笑った。イケメン力の高い二人である。
 この二人、如何した事かよく一緒に居る。下手をすれば姉妹艦よりもだ。艦時代、特に交友のあった関係でもなく、お互いこの鎮守府の役割も違う。
 木曾は重雷装巡洋艦娘の一人、特別海域の切り札とも言える主力の一人だ。一方、天龍はと言えば遠征要員である。旧式の艦故恵まれた性能を持たない天龍は、一軍メンバーに比べて一歩も二歩も劣っているのは事実だ。
 ただし、それは戦闘面の性能だけだ。天龍型の長所、燃費のよさに加え彼女には天性の才がある。天龍という艦娘は、駆逐艦娘にやたらと人気があるのだ。彼女自身の面倒見のよさもあるだろうが、個性豊かな駆逐艦娘達を捌き切れる彼女の才と、それによって補充される鎮守府の資材は決して軽視して良い物ではない。
 
 片や提督の切り札である重雷装巡洋艦。片や鎮守府の資源調達の要である軽巡洋艦。
 職場も違えば役目も違う彼女達であるが、在り方が近い為今はこうして二人でつるむ事が多いのだ。ただし、在り方が近いといっても、同じという訳ではない。
 
「でも……二人は提督に苦手に思われてないでしョ……? もし私と同じ立場になったら?」
「そ、そりゃあ……ま、まぁ……俺は、別に、確りと、自分がやる事をやるだけで……」
「……駄目だな、俺はきっと球磨姉さんに泣きついてその後提督に泣きつくな」

 こういう部分は違う。
 天龍は意地をはり、木曾はとことん素直だ。いや、あぁいった姉達に囲まれると、素直であったほうが無難であるのかもしれない。
 
「那珂ちゃんにもこの前どうやったら提督とそんな普通に話せるのか聞いたけド、良く分からないっていわれたし……」

 金剛は金剛なりに、現状を把握した上で出来る事は何かを手探りで始めている。彼女は提督を愛している。愛ゆえに暴走もするが、愛ゆえに悩むのも一人の女だからである。
 
「苦手だって思われてるのは知ってるの。けれど、私は提督の傍に居たい。あの人を笑顔にしたい。あの人の為の私でありたい……邪魔でも、いらなくなっても、私はあの人の為の私でいたい」

 真摯な金剛の呟きに、天龍は間宮に差し出された秋刀魚定食を食べながら黙って聞いた。
 そして木曾は、だんだん日本語が流暢になっていく金剛を眺めながら秋刀魚の刺身を食べていた。
 ついでに霧島は紅茶で酔ってその発言なのかと嘆いていた。
 
「よし、分かった。ちょっと待ってろ」
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